抄録 |
<はじめに>膵癌は予後不良の癌であり様々な治療が試みられている。近年、膵周囲動脈塞栓術(TPPAE)、及び肝脾動注化学療法(HSAIC)の有効性が報告されている。当院でも、これまでに68例の進行膵癌に対し、TPPAE、HSAICを施行し、比較的良好な成績であった。今回我々は、遠隔転移を有さない局所進行膵癌に対し、TPPAE後に放射線併用膵動注化学療法を試みた。放射線併用全身化学療法、動注化学療法単独例と比較・検討したので報告する。<対象と方法>対象はTPPAE併用放射線化学療法群(T-RT群)6例、放射線併用全身化学療法群(S-RT群)11例、TPPAE後動注化学療法単独群(AI群)6例である。S-RT群, T-RT群はGEM250-300mg/m2を30分でday1,8,15,29,36に全身投与または動注をし、放射線50.4Gy/28Frを併用。AI群はGEM800mg/m2をday1,8,15、5FUを500mg/day/24hrでday1-7,15-21に投与した。効果判定は放射線併用群では放射線治療終了時点、動注単独群は2コース終了時点で効果判定した。<結果>S-RT群は奏功率45.5%(PR5例,SD5例,PD1例)平均生存期間(MST) 12.5ヶ月(4~81ヶ月)であった。AI群は奏功率83%(PR 5例,SD1例)MST18ヶ月、T-RT群は奏功率83%(CR1例、PR4例、SD1例)MST21ヶ月であった。<考察>今回の検討では、動注化学療法単独でも奏功率は比較的高く、MSTも従来の化学療法を比較し良好な成績であった。さらに放射線を併用することで、奏功率、予後の延長に寄与する可能性が考えられた。また、S-RT群とT-RT群でそれぞれ1例ずつの治療後切除例を経験しており、S-RT群の1例は5年以上生存中、T-RT群の1例は切除標本で病理学的にCRが得られ、現在も生存中である。まだ、症例数が少なく、今後の症例の蓄積が必要ではあるが、TPPAE後の放射線併用動注化学療法は、有用である可能性が考えられた。 |