セッション情報 一般演題(ポスター)

タイトル

P537 男性同性愛者に発症したアメーバ性肝膿瘍の一例

演者 西尾雄司(名鉄病院消化器科)
共同演者 杉原眞(名鉄病院消化器科), 大菅雅宏(名鉄病院消化器科), 岩間晶子(名鉄病院消化器科), 前田啓子(名鉄病院消化器科), 安藤貴文(名古屋大学大学院消化器内科学), 後藤秀実(名古屋大学大学院消化器内科学)
抄録 赤痢アメーバ症は男性同性愛者の性感染症として注目され増加傾向にある.今回我々は男性同性愛者に発症したアメーバ性肝膿瘍の一例を経験したので報告する.【症例】56歳男性39℃前後の発熱が出現し近医を受診したが症状が改善しないために当院血液内科を紹介され不明熱として精査加療目的にて入院となった.入院時血液生化学検査では高度の白血球数増加とCRP上昇軽度の肝機能障害を認めた.入院後抗生剤投与を続行したが発熱が持続した上に1日2~6行の下痢があるため当科紹介受診となった.腹部超音波検査では肝右葉に内部がやや不均一な低エコーの腫瘤像がみられ肝膿瘍が疑われた.腹部CTでも同部位に長径9cmの被膜を有する造影効果の乏しい低吸収域がありまた盲腸から上行結腸の壁肥厚と周囲脂肪織の濃度上昇周囲のリンパ節腫大も認めた.胆道系には肝膿蕩の原因となるような異常はみられず盲腸上行結腸炎の経門脈性感染が肝膿瘍の原因として疑われた抗生剤に対する反応が乏しい上検査所見に比べて全身状態が比較的良好であったため赤痢アメーバ症を疑い糞便の検査を行ったところアメーバ原虫の栄養型が証明された.さらに問診により同性愛者であることが判明した.また赤痢アメーバ抗体(問接蛍光抗体法)も陽性であった.メトロニダゾール1500mg/dayの投与を開始すると共に肝膿瘍ドレナージ術を行った.穿刺液の性状は無臭の白色膿性でありアメーバ原虫はみられず細菌培養も陰性であった.大腸内視鏡検査では盲腸。上行結腸S状結腸直腸に地図状の潰瘍が散在していた治療開始後速やかに解熱しCRPは14日目に陰性化した.【結論】早期診断にて良好な結果を得た男性同性愛者に発症したアメーバ性肝膿瘍の症例を経験した.腸管感染症由来の肝膿瘍において検査所見に比べて全身状態が比較的良好な場合は赤痢アメーバ症の可能性を考え積極的に便アメーバ原虫の検査を行うことが重要であると考えられた.
索引用語