抄録 |
【目的】経皮内視鏡的胃瘻造設術(PEG)の医学的な適応を検討するため、PEG施行患者の予後因子を分析し、その適応と問題点について検討した。【方法】当院において1996年9月より2012年2月までに施行したPEG588例(平均年齢82.0歳、男188例、女400例)の生存分析を行い、予後に及ぼす因子を検討した。生存分析はカプラン・マイヤー法を用い、単変量解析はログランク法、多変量解析は比例ハザードモデルを用いて行った。検討した因子は、造設の原因となった基礎疾患、年齢、性別、Charlson Comorbidity Index(CCI)、既往歴、PEG前の栄養療法、造設時の血清アルブミン値(Alb, g/dl)、末梢血リンパ球数(TLC, /μl)、血中ヘモグロビン値(Hb, g/dl)、CRP値(mg/dl)である。【成績】全症例の中央生存期間は582日であり、30日、6ヶ月、1年、2年、3年生存率はそれぞれ94%, 76%, 62%, 46%, 37%であった。基礎疾患別の中央生存期間は、脳血管障害(n=332)855日、認知症(n=107)515日、肺炎(n=57)294日、神経疾患(n=42)868日、腫瘍性疾患(n=22)74日、慢性心呼吸器疾患(n=15)67日であった。単変量解析では年齢85歳以上(P<0.0001)、男(P<0.05)、CCI 4以上(P<0.0001)、肺炎の既往(P<0.05)、PEG前栄養が静脈栄養(P<0.01)、Alb3.0以下(P<0.0001)、TLC1300以下(P<0.001)、Hb 10以下(P<0.01)、CRP2以上(P<0.001)が有意な予後不良因子として認められた。それらの予後不良因子について多変量解析を行ったところ、年齢85歳以上(リスク比1.68)、CCI4以上(同3.13)、PEG前栄養が静脈栄養(同1.64)、Alb3.0以下(同1.60)、CRP2以上(同1.53)が独立した予後不良因子であった。 【結論】高齢で重篤な疾病を有する患者にPEGを予定する場合、不良な栄養状態や炎症を有する症例では長期予後が期待できない。そのような症例では、経鼻胃管などによる経腸栄養で栄養状態を改善し、抗生剤などで炎症を改善した後PEGを施行することが望ましい。 |