セッション情報 パネルディスカッション23(消化器外科学会・消化器病学会・消化器内視鏡学会合同)

Colitic cancerのサーベイランスと治療

タイトル 外PD23-8:

クローン病における下部直腸肛門部組織検査の検討

演者 石橋 由紀子(福岡大筑紫病院・外科)
共同演者 二見 喜太郎(福岡大筑紫病院・外科), 東 大二郎(福岡大筑紫病院・外科)
抄録 目的:クローン病(CD)の長期経過例において下部直腸肛門部は癌合併の好発部位である。従来、colitic cancerのサーベイランスとしては大腸内視鏡が中心であり、経肛門的な組織学的検査での検討はなされていない。今回自験例から経肛門的組織検査の癌サーベイランスとしての有用性を検討したので報告する対象・方法:経肛門的に下部直腸肛門部の組織検査(生検、切除、細胞診)を、主として麻酔下に行ったCD201例を対象とした[小腸型45、小腸大腸型125、大腸型31例]。検索部位および方法は下部直腸肛門管粘膜の生検(無作為に3ヶ所)、痔瘻の瘻管部の生検、細胞診および切除した皮垂の組織所見を検討した。結果:201例中8例、4.0%に癌(6例)および異型上皮(2例)を診断した。5例は肉眼的に癌を疑った有症状例で病変部の生検から癌を診断した。いずれも局所浸潤の高度進行癌で、この5例を除いたサーベイランス発見率は1.7%(3/196)であったが、Colitic cancer のリスクとされている10年以上経過例に限ると69例中7例(10.1%)となり、サーベイランスとしての発見率は4.6%(3/65)であった。サーベイランス発見癌の1例は痔瘻部の生検から粘液癌と診断した(fSTII :P0 H0 n0 a)。異型上皮の1例は肛門管粘膜の生検で診断し、2年後に高分化腺癌に至りAPRを行った(fSTII:P0 H0 n0 a)。他の1例は痔瘻部の生検、細胞診から異型扁平上皮の診断を得たが手術の承諾なく観察中である。この他に内視鏡的生検により癌を診断した症例を2例(RbP fSTII, Ra fSTII)含んでおり、経肛門的な組織検査に内視鏡的生検を加えると10年以上経過例に対するサーベイランス発見率は7.7%(5/65)であった。結語:CD下部直腸肛門部に対する経肛門的組織検査は、Colitic cancerのサーベイランスとして意義があり、大腸内視鏡検査を組み合わせることにより有用性はさらに増すものと思われる。
索引用語 クローン病colitic cancer, 下部直腸肛門部組織検査