セッション情報 パネルディスカッション23(消化器外科学会・消化器病学会・消化器内視鏡学会合同)

Colitic cancerのサーベイランスと治療

タイトル 外PD23-9:

クローン病患者における直腸・肛門部の癌化

演者 古川 聡美(社会保険中央総合病院・大腸肛門病センター)
共同演者 佐原 力三郎(社会保険中央総合病院・大腸肛門病センター)
抄録 目的:クローン病患者における直腸・肛門部の癌化に対し、サーベイランスの確立に向けて、精査のタイミング等について検討したい。背景;当院において直腸癌、痔瘻癌および高度異型の診断があったクローン病患者にについて検討を行った。症例数23名、直腸切断術を行えた例は18例(うち1例は他院で手術)、切除不能で人工肛門造設のみを行った症例が5例あった。手術時平均年齢は39.6歳(25~52歳)。うち1例は直腸切断術後に残存した痔瘻の瘻管から発生した癌であったため、以下の検討からは除外した。直腸切断術を行ったうちの7例が直腸癌、14例が痔瘻癌、1例が直腸の高度異型例であった。結果:1.痔瘻の既往が4例で不明であったが、痔瘻のタイプとしては5例が低位筋間痔瘻, 13例は深部痔瘻であった。2.クローン病発症から手術までの平均期間は、16.8年(7~25年)、痔瘻の発症から手術までの平均期間は10.7年(1~22年)であった。精査・手術のきっかけとして2例以外に肛門部の疼痛が認められたが、疼痛の始まりから手術までの平均期間は11.4カ月(3~28カ月)であった。この肛門痛は10例の患者では重度で、NSAIDを定期的に服用しなければならず、さらに経時的には持続して増悪するものであった。3.手術前の病理的な確定診断は15例でなされていたが、大腸内視鏡による生検が3例、腰椎麻酔下の生検が8例、痔瘻周囲のコロイド分泌物からが3例、CTガイド下生検が1例であった。4.画像診断では、MRIを21例に施行しているが、腫瘤として癌が疑われたものは14例であった。5.手術結果としては治癒切除を行えたのは直腸癌の5例、痔瘻癌の2例、高度異型の1例であった。(非治癒切除9例)考察:クローン病患者において、持続して悪化し続ける肛門痛を発症した場合、特に複雑痔瘻を合併する場合にはすみやかに精査を行う必要があると思われるが、サーベイランスにつなげるためには、画像診断や生検のタイミング・方法についての検討がもう少しなされるべきであろう。
索引用語 クローン病, colitic cancer