セッション情報 パネルディスカッション23(消化器外科学会・消化器病学会・消化器内視鏡学会合同)

Colitic cancerのサーベイランスと治療

タイトル 外PD23-11:

クローン病に合併した大腸癌の検討とサーベイランス

演者 佐藤 太一(高野病院・消化器外科)
共同演者 緒方 俊二(高野病院・消化器外科), 山田 一隆(高野病院・消化器外科)
抄録 【目的】クローン病(以下CD)に合併した大腸癌を検討し、癌サーベイランス法について考察した。【方法】1997年から2011年までのCD手術施行例176例のうち、CDに合併した大腸癌6例(全例痔瘻癌、以下CD群)の特徴と経過を検討した。また同時期に手術を施行された非CD痔瘻癌15例(以下非CD群)と比較検討した。【成績】CD群のクローン病の平均罹病期間は22年(最短12年)、痔瘻の平均罹病期間は18.2年であった。癌診断時の平均年齢はCD群44.0歳、非CD群61.8歳で、CD群が有意に若かった(p=0.0005)。組織型はCD群の4例(67%)、非CD群の8例(53%)に粘液癌を認め、有意差はなかった。癌発見の契機は、CD群は肛門痛4例、排膿の増加3例、下血2例(重複あり)、非CD群は肛門痛9例、排膿の増加9例、下血4例(重複あり)、など、全例臨床症状の変化であった。腫瘍マーカーの上昇は、CD群は3例(50%)、非CD群は7例(47%)に認め、有意差はなかった。術前に確定診断に至ったのは、CD群は5例で、4例に複数回生検、2例に腰椎麻酔下生検が行なわれていた。非CD群は全例術前に確定診断に至っており、7例に複数回生検、8例に腰椎麻酔下生検が行なわれていた。進行度は、CD群はStage IIが3例、Stage IIIが1例、Stage IVが2例、非CD群はStage IIが8例、Stage IIIが3例、Stage IVが4例であり、有意差はなかった。根治手術後の再発は、CD群は5例中1例、非CD群は11中5例に認め、有意差はなかった。【結論】CDに合併した痔瘻癌は通常の痔瘻癌よりも若年で発症する。CD長期経過例(8-10年以上)で、直腸肛門病変や狭窄を有する症例では、定期的な診察、画像診断と、臨床症状の変化、悪化が認められた場合には、積極的な組織採取(複数回の生検、麻酔下生検、細胞診)を行なうことが、癌サーベイランスに有用であると考えられた。
索引用語 クローン病, 痔瘻癌