セッション情報 パネルディスカッション24(消化器外科学会・消化器病学会・消化器内視鏡学会合同)

高度進行食道癌に対する治療戦略

タイトル PD24-基調講演:

高度進行食道癌の治療方針とその根拠

演者 藤田 博正(久留米大・外科)
共同演者 田中 寿明(久留米大・外科), 的野 吾(久留米大・外科)
抄録 【始めに】久留米大学病院では1998年の集学治療センター開設以来、内視鏡的治療例を除く全ての食道癌を外科で治療してきた。その約半数が手術不可能であった。
【T4食道癌】気管、大動脈浸潤T4食道癌に対し、Informed Consent(IC)に基づいて患者が治療法を選択する臨床試験を行った。初回試験では術前化学放射線療法(CRT)と術後CRTを比較し(J Sur Oncol, 2005)、術前CRTの有効性を認めた。第2試験では術前CRT36Gyの後、有効例と無効例に層別して手術と非手術の予後を比較した(World J Surg 2005)。術前CRT有効例では手術の有効性は認められず、無効例で手術の有効性がみられた。この結果より、T4食道癌には根治的化学放射線療法(dCRT)を行い、遺残・再発例にSalvage手術を勧めている。ただし、姑息的Salvage手術の1年生存例はなく(日消外会誌2010)、治癒切除不能の場合はバイパス術、食道ステント、造瘻術あるいは緩和医療を勧めている。
【多数リンパ節転移】切除可能食道癌は手術±術後化学療法(CT)を行ってきた。JCOG9907後も、cStage III症例はICを行い患者に治療選択を委ねている。術後CTの効果に関する検討で、8個以上転移例でのみ術後CTの生存率が手術単独を上回る結果を得た(Digest Surg 2003)。そこで、 8個以上転移例には術後CTを強く勧め、7個以内転移例は患者の希望に任せてきた。最近の検討では5個以上転移例に術後CTの予後改善効果を認めている(投稿中)。
【M1食道癌】M1食道癌は複数の治療を行った症例は単一治療症例より生存率が高かった。しかし、手術の有無で生存率に差がなかった(Dis Esoph 2010)。そこで、当院ではM1症例には化学放射線療法(CRT)を勧めている。
【まとめ】T4食道癌はdCRT±Salvage手術、5個以上リンパ節転移例は術後CT、M1食道癌はCRTを患者に勧めている。
索引用語 食道癌, 治療戦略