セッション情報 パネルディスカッション24(消化器外科学会・消化器病学会・消化器内視鏡学会合同)

高度進行食道癌に対する治療戦略

タイトル 消PD24-1:

T4M0食道癌に対する治療戦略

演者 三浦 昭順(がん・感染症センター都立駒込病院・外科)
共同演者 出江 洋介(がん・感染症センター都立駒込病院・外科), 門馬 久美子(がん・感染症センター都立駒込病院・内視鏡科)
抄録 【背景】T4食道癌は,初回治療に化学放射線療法(CRT)が第1選択となる.しかし,T3.5など診断の問題でCRT or 術前化学療法の選択について,隣接臓器との瘻孔などの全身状態の問題などで治療法の選択に苦慮することが少なくない.【目的】T4M0食道癌に対する当院での治療成績について検討した.【対象と方法】2000-10年までに当科でcT4M0食道扁平上皮癌と診断,初回治療として手術療法を選択しなかった195例を対象とし,治療別にretrospectiveに検討した.【結果】1.内訳:195例中,CRT先行群(CRT群)が49例,化学療法先行群(化学療法群)が121例,積極的治療をしなかった群(姑息群)が25例.化学療法群のうち,その後にCRTが可能であった群(導入化学療法群)が70例.一方,何らかの理由でCRTを施行しなかった群が51例(化学療法単独群),うち根治術は4例,バイパス術は4例,ステントは12例,PEGは2例.残りの29例は治療前からの瘻孔形成を含めた全身状態不良,化学療法治療後すぐに遠隔転移が出現したなどが理由で治療が不可能であった.無治療群はステントが15例,PEGが3例,7例は治療が不可能であった.2.効果:化学療法群の化学療法の効果はRECIST判定でCR/PR/SD/PD=1/39/59/22例,奏効率(CR+PR)は33%.その後のCRTの奏効率は63%,CR率は18%.CRT群では奏効率は79%,CR率は15%.3.予後:化学療法群の50%生存期間(MST)は10ヶ月,1年生存率(1生率)は42%,CRT群は7.8ヶ月,37%,姑息群では6.2ヶ月,12%であった.化学療法群中,導入化学療法群はMSTが12.4ヶ月,1生率が51%,化学療法単独群ではMSTが7.3ヶ月,1生率が27%.【まとめ】当院の治療成績では,T4食道癌に対して化学療法を先行したとしても,CRT先行治療と比べて治療成績は劣らなかった.むしろ,治療後のステントやバイパス術などのQOL向上に向けた治療選択が可能であった点や導入化学療法群の治療成績からも化学療法を先行治療の有効性が示された.
索引用語 T4M0食道癌, 化学療法