抄録 |
【目的】他臓器浸潤を来した高度進行食道癌は、通常初回治療として手術を選択せず化学療法(CT)や放射線療法(RT)を用いた集学的治療が必要となる。cT4食道癌症例について検討し報告する。【対象と方法】(1)1998年以降に当科で治療を行った初回診断時にcT4の食道癌105例。(1-1)初回治療で化学放射線療法(CRT)群、RT群、CT群に分類。また奏効群(CR+PR)、非奏効群(SD+PD)に分類し予後を検討。(1-2)T4症例で手術をし得た手術群と、非手術群に分け予後を検討。(2)術前CRT施行の食道癌34例で臨床病理学的治療効果とFDG-PETの治療前後のSUV値の推移を検討。(3)Docetaxel+Cisplatin+5-FU(DCF)併用CRTを行ったT4食道癌21例の検討。【結果】(1)CRT 87例,RT 12例,CT 6例。(1-1)奏効率はCRT/RT/CT群 59.8%/75%/16.7%。CRT奏効52例中22例とCRT非奏効35例中7例が後に手術をし得た。2年生存率(disease specific)CRT 31.0% RT33.3% CT16.7%と有意差無し。奏効群/非奏効群では40.3%/16.3%(p=0.0004)であり奏功群の方が予後良好。(1-2-1)CRT奏功群52例中手術群22例/非手術群30例で2年生存率は手術群50% 非手術群33.3%(p=0.0184) (1-2-2)CRT非奏功群35例中手術群7例,非手術群28例で2年生存率は手術群42.9% 非手術群10.7%(p=0.0289) いずれも手術群の方が予後良好。(2)FDG-PETのCRT後術前SUV値はGrade3:1.9±0.6,Grade2:3.1±2.2,Grade1:3.8±1.2でGrade3の診断は特異度100% 感度42.3% 陽性的中率100% 陰性的中率34.8% 正診率55.9%。(3)治療効果はCR/PR/SD/PD 6/12/3/0例で奏功率86.4%,CR率27.3%で2年生存率54.9%。【結語】遠隔転移の無いT4食道癌は術前CRTでダウンステージングにより手術可能となれば予後延長が期待できる。非手術症例においてT4に対する根治的CRTとしてDCF+RTは奏効率も高く有用である。またFDG-PETはCRT治療効果予測として有用であり高度進行食道癌の治療においてより適切な治療戦略を立てる一助となり得る。 |