セッション情報 パネルディスカッション24(消化器外科学会・消化器病学会・消化器内視鏡学会合同)

高度進行食道癌に対する治療戦略

タイトル 外PD24-5:

T4食道癌に対する化学放射線療法の意義

演者 阿久津 泰典(千葉大大学院・先端応用外科学)
共同演者 首藤 潔彦(千葉大大学院・先端応用外科学), 松原 久裕(千葉大大学院・先端応用外科学)
抄録 [はじめに]当科では遠隔転移のない切除不能T4食道癌に対しては化学放射線療法(CRT)を第一選択とし,ダウンステージングとその後の切除を目指している.そこで, T4食道癌に対するCRTの治療成績を検討し,CRTの耐性予測因子としてのCOX2の発現の意義を検討した.
[対象と方法][CRTは5-FU(500mg/m2 day0-4), CDDP(15mg/m2 day1-5), Radiation(2Gy/day day1-5, 8-12, 15-19, 22-26: 総線量40Gy)とし,40Gy時点で切除可能性を評価.この時点で切除可能な症例は3-4週間のインターバルをおいて手術,切除不能症例は5-FU(day28-32), CDDP(day29-33), Radiation(day29-33, 36-40: 総線量60Gy)を追加し切除可能性を再評価している.症例は2000年から2011年に遠隔転移のない切除不能T4食道癌に対して上記レジメンでCRTを施行した症例202例を対象とした.COX2発現とCRT耐性との検討は,CRT後に手術を行い病理学的評価が可能であった58例(T4以外の症例も含む)とした.COX2の発現は治療前の生検組織切片に対し免疫染色を行い,CRTのレスポンスは手術による摘出標本におけるCRTの病理学的効果とした.
[結果][202例のうち40Gy時点でダウンステージされ切除可能となった症例は30例(14.8%)であった.40Gy時点を超えてダウンステージされた症例は14例(6.9%)で,うち50Gyを超えた時点でいわゆる救済手術を施行された症例は8例(3.9%),全症例中手術可能となった症例(切除群)は合計で44例(21.8%),切除不能根治CRT症例(DCRT群)は158例(78.2%)であった.MSTは切除群で52.9ヶ月,DCRT群で21.1ヶ月と統計学的に有意差を認めた(P<0.001).COX2の発現を弱(染色率≦30%未満),中(31-%),強(90%≦)の3つに分けると, Grade3の割合がおのおの87%,62%, 30%と,COX2の発現が高いほどCRTに耐性を示した(P=0.006).
[まとめ][T4食道癌においてCRTにより切除可能となった症例の予後は良好であった.CRT耐性予測因子としてのCOX2発現は有用であると思われた.
索引用語 食道癌, 化学放射線療法