抄録 |
背景:clinical T4食道癌は食道癌治療ガイドラインで化学放射線療法・放射線療法が主たる治療法とされているが、加療後に局所が切除可能と判定されれば手術に踏み切る場合もある。特に加療後にcT3と判定され切除可能となった症例に対して切除を行うのか化学療法を継続するのかは、判断に苦慮することが多い。方法:2000年4月から2011年12月に当科において治療を行った食道癌症例698例のうち、cT4(AI)NxM0の53症例に対して集学的治療(放射線療法・化学療法)を施行後にcT3(AD)と判定され切除術を施行した切除群28例と、集学的治療を継続した非切除群25例について患者因子・生存期間の比較を行った。結果:放射線治療は切除群28例中18例に、非切除群には全例に施行されていた。化学療法の内訳は、切除群:5FU+CDDP 27例、DOC+CDDP 1例、非切除群:5FU+CDDP 16例、DOC+CDGP 5例、なし(放射線単独) 4例であった。切除群は非切除群に比べ若年で(切除 vs. 非切除: 62.4±7.4才 vs. 69.8±7.9才, p<0.001)、画像上リンパ節転移を高率に認めた(切除 vs. 非切除、リンパ節転移 あり/なし: 23/8 vs. 14/11, p=0.021)。性別・腫瘍の局在・腫瘍径・併存疾患の有無に有意差を認めなかった。切除群では術死はなく、在院死を1例(術後2か月目、縫合不全に伴う頸動脈出血)に、術後合併症を5例(縫合不全3例、肺炎2例、乳び胸1例、拳上胃管・肺瘻1例 重複あり)に認めた。平均生存期間および生存率は両群間で有意差を認めなかった(MST、切除群=23.2ヶ月 vs 非切除群=19.6ヶ月、3年生存率:切除群=39.8%, 非切除群=27.0%, Log-Rank Test p=0.33)。結語:cT4食道癌に対し集学的治療を施行後cT3と判定された症例に対する切除による予後の延長は認められなかった。術後の在院死や合併症発生があることから、より厳密な手術適応が求められると考えられた。 |