セッション情報 パネルディスカッション24(消化器外科学会・消化器病学会・消化器内視鏡学会合同)

高度進行食道癌に対する治療戦略

タイトル 消PD24-7:

食道癌遠隔転移例に対する化学放射線治療の意義

演者 佐藤 康史(札幌医大・4内科)
共同演者 大沼 啓之(札幌医大・4内科), 加藤 淳二(札幌医大・4内科)
抄録 【目的】遠隔転移を伴うStageIVb食道癌症例に対しては,有効な治療法はなく全身化学療法を施行することが一般的である。一方,食道狭窄や痛みを有する症例,大動脈や気管枝への穿孔を起こす可能性のある症例に対して,化学放射線療法(CRT)は局所制御を目的とする治療オプションとして行われることがある。しかしながら,このような高度進行食道癌に対するCRTの臨床的意義の明らかでない。そこで今回、当科においてCRTを施行したStageIVb食道癌の治療成績を解析しその意義を検討した。【方法】当科で経験したStageIVb症例のうち,CRTに同意を得た10症例を対象とした。治療レジメンは,CDGP/5-FUによるCRT(CDGP:50 mg/m 2 (day1,8),5-FU:400 mg/m2/day (day1~5,8~12、60Gy)およびDTX:20 mg/m2 (day1,8)を追加した3剤併用レジメであるDTX/CDGP/5-FUによるCRT(DNF-R)を用いた。また,Dysphagia scale を含むEORTC QLQ-OES18を用いて治療前後のQOLの変化についても検討した。【成績】平均年齢は66歳, PS: 0/1/2: 4/4/2,10例の内訳は,遠隔リンパ節転移のみを伴う4例,他臓器転移を伴う6例(肝:4例、肺:1例、その他:2例)であった。CRT完遂率は100%であった。奏効率80%(CR/PR/SD/PD: 2/6/1/1),原発巣はCR6,PR4例,転移巣ではCR2,PR6例,SD1例,PD 1例であった。DNF-R群において,転移巣のRR率は100%と良好であった。追跡期間中央値は314日でMST は1060日(リンパ節転移群:1060日,他臓器転移群:314.5日)であった。一年生存率は全体で51%(リンパ節転移群:75%、他臓器転移群:25%)であった。食道-気管瘻を伴う1例は,瘻孔閉鎖せずBSCに移行したが、他の9例では,嚥下困難や慢性出血等の改善が得られた。QOL scoreは治療前49.8 ± 10.2から治療後36.3 ± 8.2(p= 0.01)と有意に改善した。【結論】StageIVb食道癌に対してもCRTにより,高い局所制御率と QOLの改善が得られ,特にリンパ節症例で長期生存が得られた。特に3剤併用CRTの効果が期待できると考えられ今後さらに検討する予定である。
索引用語 高度進行食道癌, CRT