抄録 |
【目的】H.pylori除菌前後における背景胃粘膜の内視鏡像変化について5年以上経過が追えている症例を後ろ向きに解析したので報告する。【方法】2003年1月から2007年12月までに、当院で除菌療法を行い除菌が成功した患者のうち、治療前後で内視鏡検査が施行され、5年以上経過が追えている症例を対象とした。内視鏡像は、萎縮、腸上皮化生、たこいぼびらん、びまん性発赤、過形成ポリープについて0,1,2の3段階で評価し、除菌前後のスコアをt検定を用いて比較した。【成績】対象患者は42例であり、年齢の中央値は64歳(36~79歳)、性別は男/女:26例/16例、主な内視鏡診断は、胃潰瘍および胃潰瘍瘢痕19例、十二指腸潰瘍および瘢痕9例、早期胃がん7例、その他7例であった。観察期間の中央値は6.5年(5~9年)であった。除菌前の背景胃粘膜について、萎縮はopen type, closed type, なしがそれぞれ26, 16, 0例、腸上皮化生 17例、たこいぼびらん14例、びまん性発赤29例、過形成ポリープ7例であった。除菌前後で背景胃粘膜の内視鏡所見に変化がなかったのは4例(9.5%)であった。内視鏡所見の改善率は、萎縮33%、腸上皮化生 47%、たこいぼびらん64%、びまん性発赤65 %、過形成ポリープ100 %であった。たこいぼびらん7例とびまん性発赤3例は除菌後に出現あるいは増悪が見られた。除菌前後のスコア比較で有意に改善した所見は、萎縮(p<0.0001)、腸上皮化生(p=0.00334)、びまん性発赤(p=0.0003)、過形成ポリープ(p=0.0099)であった。逆流性食道炎の出現は4例(10%)であった。【結論】H.pylori除菌後の長期経過では、過形成ポリープは全例改善し、萎縮、腸上皮化生、びまん性発赤は、改善傾向であった。たこいぼびらんと発赤については増悪した症例も認めた。 |