抄録 |
【目的】H.pylori 除菌後の内視鏡所見の変化を明らかにする。【方法】胃炎126例,GU56例,GU+DU39例,DU43例,胃癌ESD後51例を対象とした。メチレンブルーを散布し,各疾患の腸上皮化生の変化を,除菌前と除菌1年,2年,3年,4年,5年以上後に,3カ所(前庭部小弯・大弯,体部小弯)で比較した。また,腸上皮化生のない部位(メチレンブルー不染色部位)の組織学的萎縮の変化を,除菌前,1年,2年,3年,4年,5年以上後に,4カ所(前庭部と体部の小弯・大弯)で比較した。さらに,50例に対し,腸上皮化生のない部位でNBI+拡大観察を行い,除菌前後の変化を,1年,2年,3年後に4カ所で比較した。【成績】除菌前の腸上皮化生の面積比は,前庭部小弯では胃癌82%,GU62%,胃炎53%,GU+DU30%,DU13%,前庭部大弯では68%,30%,30%,24%,3%,体部小弯では81%,57%,45%,12%,1%であり,胃癌,GU,胃炎,GU+DU,DUの順に腸上皮化生が強かった。除菌5年以上後の腸上皮化生の改善率は,胃癌では前庭部小弯が40%,前庭部大弯が52%,体部小弯が61%であり,GUでは43%,60%,72%,胃炎では58%,82%,82%,GU+DU43%,67%,50%,DU50%,50%,100%であった。また,腸上皮化生の面積比が3/4以上の症例では改善する症例は少なかったことから,腸上皮化生はいづれの疾患でも除菌により3カ所で改善したが,腸上皮化生の程度が強い症例では回復が悪いと考えられた。さらに,除菌5年以上後の組織学的萎縮の改善率は,前庭部小弯が84%,大弯が72%,体部小弯が88%,大弯が95%であり,萎縮はよく改善した。次に,NBI+拡大観察を除菌前と3年後で比較すると,AB分類は,体部大弯では78%がB0まで,体部小弯では57%がB1まで,前庭部小弯では88%がA0まで,大弯では75%がA0まで改善した。粘膜模様は,体部小弯では67%が,前庭部小弯では31%が円形に改善した。腺開口部は,体部大弯で86%が,大弯で75%がピンホールに改善した。毛細血管は,体部大弯で89%,小弯で78%,前庭部小弯で92%,大弯で89%が均一になった。【結論】除菌後長期経過例では腸上皮化生,組織学的萎縮,AB分類,毛細血管がよく改善した。 |