抄録 |
腸幹細胞(ISC)は絶え間ない腸粘膜再生を担っている.近年t Lgr5+ISCとBmi1+ISCという二種類のISCが同定された.本研究の目的はこの二種類のISCグループの関係性増殖制御機構および粘膜障害時の役割を解明することである.実験にはLgr5-eGFP-IRES-CreERT2;Rosa26-YFPBmil-CreER ; Rosa26-YFPマウスを用いた.このマウスにTamoxifenを投与するとそれぞれのISCと子孫細胞がラベルされ細胞系譜が追跡できるためISCの増殖能および細胞動態を組織学的およびFACSにより解析した.最初にWnt agonist R-spond血1およびWnt inhibitor Dicktkopf-1(Dkkl)を発現するアデノウイルスをマウスに投与した.腸陰窩底部に存在するLgr5+ISCは速い細胞回転を示しR-spondin1により増殖Dkk1により消失した.一方陰窩底部やや上方に存在し細胞回転が遅い休止期にあるBmi1+ISCはWntシグナルに対する感受性を殆ど示さなかった次に放射線障害モデルを作製した放射線照射後Lgr5+ISCとそのマーカーである01fm4の発現は消失し高い放射線感受性を示した.一方BmiI+ISCは放射線照射後に高い増殖能を示しその子孫細胞が再生粘膜上皮を構築するとともにBmil+細胞が遠位側小腸にも喬現した.さらにBmi1+ISCを単離培養するとBrni1+ISCはLgr5+ISCを産生した.今回の結果はこの二種類のISCには嫡出性が存在し.それぞれの増殖制御機構が異なること粘膜障害時にはBmi1+ISCがLgr5+ISCのリザーバーとして働いていることを示しておりISCシステムもまた血球系幹細胞や毛包系幹細胞と同様に複数の幹細胞グループにより巧妙に構築されていることが明らかになった. |