セッション情報 シンポジウム2

消化管stem cellの新たな展開 基調講演

タイトル

S2-7 Hesは大腸上皮幹細胞の位置を規定しニッチ由来のWntやBMPシグナルによる分化制御に関与する

演者 上尾太郎(京都大学大学院消化器内科学)
共同演者 妹尾浩(京都大学大学院消化器内科学), 仲瀬裕志(京都大学大学院消化器内科学)
抄録 【目的】消化管上皮幹細胞の制御にNotchシグナルが重要な役割を果たしている今回我々はNotchの下流因子Hesが消化管幹細胞の制御過程でニッチとの相互作用にどのような影響を及ぼすかを検討した.【方法】消化管特異HesllHes3/Hesiトリプルノックアウトマウス(以下Hesl/3/5cTKO)を作成しWntやBMPシグナルの関与を免疫染色にて解析した.【結果】コントロールマウスでは陰窩底部に幹細胞があり底部から中央にかけ増殖細胞を多数認め内出線へ向かって成熟細胞が供給されていた。しかしHesl∠3/5cTKOでは陰窩中央に幹細胞と著しく減少した増殖細胞が位置し.内旋側と底部側の両方向に成熟細胞が供給されていた.Hes1/3/5 cTK:0ではバネート細胞の出現や内分泌細胞の増加を認めるが杯細胞が上皮の大半を占めていたしかし生後1年まで観察するとHesl/3〆5 cTK:Oの大腸は小腸様の絨毛形態を呈しまた成熟細胞の分布が劇的に変化した.依然として陰窩中央に増殖細胞が位置するがそれよ.り内腔側に多数の吸収細胞と内分泌細胞が分布し一方底寺側にはバネート細胞と杯細胞のみが分布していた.しかしコントロールならびHesl/3/5 cTK:0とも免疫染色にてWntシグナル活性化のマーカーのnuclearβ一cateninやSox9は陰窩底部から中央にかけ分布しまたBMPシグナル活性化のマーカー pSmadl/5/8は内患側から陰窩中央にかけ分布し幹細胞分化に関与する両シグナルへのHesの直接的影響は認めなかった.以上から陰窩中央の幹細胞より底部へ供給される前駆細胞はWntシグナルの影響をうけSox9を発現しバネート細胞と杯細胞へ分化したのに対し陰窩中央の幹細胞より内調側へと移動する前駆細胞はBMPシグナルの影響をうけSox9が発現せず吸収細胞と内分泌細胞に分化したため前述の二次的な変化が惹起されたと推察された.【結論1Hesが幹細胞の位置を規定しニッチ由来のWntやBMPシグナルによる分化制御に関与していることが示された.
索引用語