セッション情報 シンポジウム9

疾患モデル動物を用いた消化器病研究の最前線

タイトル

S9-1 疾患モデルより解明された肝病態に対する転写因子Nrf2の生体防御機構

演者
共同演者
抄録 出町1酸化ストレスの発生は慢性肝疾患における共通の病態増悪因子と考えられている.転写因子Nrf2は酸化ストレスに対する生体防御機構を発動する統括的因子である.我々はこのNr E2に着目しNrf2遺伝子欠損マウス(Nrf2-nutl)やNr E2過剰発現マウスであるKeap1遺伝子低下マウス(Keapl-kd)を用いて様々な肝疾患モデルマウスを作製し肝の疾病病態に対してN㎡2の誘導する生体防御機構の役割を検討してきた.【方法】各種Nrf2遣伝子改変マウスに対して1.総胆管結紮による閉塞性胆汁うっ滞モデルT2.動脈硬化+高脂肪食(Ath+HF)投与による脂肪性肝炎モデル3.メチオニンコリン欠乏食(MCDD)投与による脂肪性肝炎モデルを作製し疾病肝における封rf2の生体防御機構の詳細について解析した.【成tWI 1.閉塞性胆汁うっ滞モデル.においてNrf2は酸化ストレス消去系分子に加え排泄型輸送蛋白であるMrp fatrtilyの発現を誘導しNrf2を過剰繭紬するKeap1-kdでは酸化ストレスの発生と高ビリルビン血症が抑制された.2.Ath+HF投与脂肪性肝炎モデルにおいてNrl12-nUlは野性型マウス(WT)に比較して早期に重症の脂肪性肝炎像を呈した.Nrf2は酸化ストレス消去分子の発現誘導に加え肝細胞における脂肪酸代謝の活性化を抑止し脂肪性肝炎の進行に影響を与えた.3.MCDD投与による脂肪性肝炎モデルにおいてKeap1-kdでは脂肪性肝炎の病理学的変化は殆ど認められず一方Nrf2-nullではWTと比較してより重症の脂肪性肝炎像を呈し更に顕著な肝細胞への鉄蓄積を認めたNrf2-nU11の初代培養肝細胞では鉄の排泄が低下しておりN㎡2は肝細胞における鉄の蓄積を抑止していると考えられた.【結語】Nrf2は酸化ストレス消去系分子の発現誘導のみならず肝細胞における胆汁分泌の促進脂肪酸代謝および鉄代謝の修飾など広範な代謝性因子の調節にも関与し慢性肝疾患の病態軽滅と進行相田に重要な役割を演じていると考えられた.
索引用語