セッション情報 シンポジウム9

疾患モデル動物を用いた消化器病研究の最前線

タイトル

S9-3 新規疾患モデルによる自己免疫性肝炎(AIH)の病態機構の解明

演者 渡部則彦(京都大学大学院医学研究科次世代免疫制御を目指す創薬医学融合拠点)
共同演者 青木信裕(京都大学大学院医学研究科次世代免疫制御を目指す創薬医学融合拠点), 池田亜希(京都大学大学院医学研究科次世代免疫制御を目指す創薬医学融合拠点)
抄録 AIHは慢性肝炎のみならず急性肝炎や劇症肝炎までそのとりうる病態は多彩でありまた自己反応性T細胞によって誘導される臓器特異的な自己免疫疾患であるが血清IgGの上昇と抗核抗体などの自己抗体の出現を伴う特徴を持つ.このようなAIHの病態解析が可能な自然発症型動物モデルが最近まで開発されていなかった.最近私達は劇症型の自然発症AIHモデルを開発した.このモデルでは抑制性共刺激分子PD一一1欠損マウスにFoxp3+制御性T細胞除去目的に新生仔期胸腺摘除を施行することで血清IgGの上昇と高度の抗核抗体産生を伴い致死的な重度のAIHが発症する〈目的・方法〉本研究ではAIHの病態機序解明を目指してモデルマウスでの病態解析を行った.<結果>1)CD8T細胞は。 CD4 T細胞より肝組織に広範に浸潤しAIHの劇症化に必須であるのに対してCD4T細胞はCD8T細胞の肝浸潤誘導をも含むAIH発症誘導に必須であった.2)AIH発症を誘導するCD4T細胞の活性化は脾臓で生じ脾臓においてそのCD4T細胞は胚中心を持つリンパ濾胞に局在し濾胞ヘルパーT細胞(TFH細胞)としての形質を持ち。脾臓の濾胞胚中心の形成血清IgGの上昇抗核抗体の産生肝炎発症に必須であった3)AIH発症時期の脾臓ではCCR6を発現したT細胞が増加し肝臓ではそのリガンドであるCCL20の発現上昇を認めCCR6-CCL20系に依存した脾臓から肝臓へのT細胞の移行がA]Hの発症誘導に必須であった.4)一方でA正【の劇症期には脾臓ではCXCR3を発現したT細胞が増加し肝臓ではそのリガンドであるCXCL9の発現上昇を認めCXCR3℃XCL9系に依存した脾臓から肝臓へのT細胞の移行がAIHの劇症化に必須であった.5)肝炎誘導性TFH細胞と肝傷害性CD8T細胞の初期活性化はIL-21に依存し肝炎劇症化に関与するT細胞分化誘導にはa-18が必要であった.<結論>AIH発症誘導と肝炎劇症化の機序を明らかにした。これらの知見はヒトAIHの新規治療法開発につながるものと期待できる
索引用語