セッション情報 |
パネルディスカッション25(消化器内視鏡学会・消化器病学会・消化器がん検診学会合同)
H. pylori 除菌後長期経過による内視鏡像の変化
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タイトル |
消PD25-5:H. pylori除菌療法後および除菌後発生胃癌についての胃粘膜に関する検討-長期にわたる前向きコーホート研究の解析からー
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演者 |
豊川 達也(国立福山医療センター・消化器科) |
共同演者 |
洲脇 謹一郎(四国中央病院・内科), 中津 守人(三豊総合病院・内科) |
抄録 |
【目的】H. pylori除菌後長期にわたり観察し得た症例の萎縮性胃炎および腸上皮化生の改善の程度、特徴を明らかにすることを目的とした。また、H. pylori除菌後に発覚した胃癌について、その背景粘膜についても検討した。【方法】対象は、H. pylori除菌療法を施行し除菌成功後5年以上経過観察できている241例、観察期間平均101ヵ月(60-143ヵ月))である。これらについて毎年上部消化管内視鏡検査を行い、5点生検を施行し、Updated Sydney systemに則って萎縮性胃炎と腸上皮化生についてスコア化し評価を行った。また、そのうち除菌後に胃癌が発覚した症例について、その背景粘膜について同様にスコア化し評価した。【成績】萎縮スコアは、除菌5年後では胃角部のみで有意に改善していたが、10年後では前庭部を除くすべての部位で有意に改善している結果であった。腸上皮化生については、5年後、10年後ともすべての部位で有意差をもっての改善は認めなかったが、増悪を抑制する結果であった。また、これらのうち60歳以上の高齢者84例について同様に検討すると、萎縮スコアは5年後ですでに有意に改善していた。さらに、十二指腸潰瘍症例を除くいわゆる萎縮性胃炎のすすんだ症例134例で検討したところ、除菌2年後の早期に前庭部以外の部位で有意に改善している結果であった。次に、本研究の観察期間中に除菌後に胃癌が発覚した症例を6例認めたが、いずれも胃潰瘍症例の男性で、除菌前の体部における萎縮スコアが高値でかつ除菌2年後にも改善していない症例であった。【結論】H. pylori除菌療法により粘膜萎縮は改善し、腸上皮化生は進行を抑制していた。粘膜萎縮改善の程度は高齢者や萎縮のすすんだ症例で顕著であった。また、除菌後胃癌の発生についてその背景粘膜、特に萎縮に関して明らかとなった。これらはH. pylori除菌療法後の経過観察に非常に有用であると思われた。 |
索引用語 |
H. pylori除菌療法, 除菌後胃癌 |