セッション情報 シンポジウム9

疾患モデル動物を用いた消化器病研究の最前線

タイトル

S9-6 遺伝子改変膵発癌マウスモデルを用いた膵癌研究の臨床への橋渡し的展開

演者 伊地知秀明(東京大学消化器内科学)
共同演者 伊佐山浩通(東京大学消化器内科学), 小池和彦(東京大学消化器内科学)
抄録 【目的】我々は膵臓特異的Kras活性化÷Tgfbr2ノックアウトによるマウス膵発癌モデルを樹立した.本モデルを用いた膵癌の進展機序及び分子標的薬の効果・作用機序の解析とその実臨床への応用の試みを報告する.【方法】1本モデルの膵癌の表現型を解析しモデルから膵癌細胞や膵線維症細胞の培養系を樹立した.2.本モデル膵癌における腫癌間質相亙作用の詳細とその意義を検討した.3.本モデルマウスに対し標準治療薬gemcitabine(GEM)・S-1や各種分子標的薬を投与しその効果及び作用機序を検討した.4.膵癌患者に対するGEM+ARB併用療法をretr(Fspectiveに解析しt更にprospectiveな臨床試験を行った【成績】1.本モデルは間質の増生・線維化の著明な管状腺癌というヒト膵癌の組織学的特徴をよく再現し生存期間中央値59日で癌死したマウス膵癌組織や前癌病変組織から腫瘍細胞や線維芽細胞の培養系を樹立することが可能であった.2.膵癌細胞が特徴的に分泌するCXCR2リガンドが間質からCTGFを産生させ腫瘍促進的に作用していた.CXCR2阻害剤はモデルマウスの生存期間を有意に延長した.3. GEMS-1は本モデルの生存を有意に延長した.GEM+erlotinibはGEM重職よりもさらに良好な生存成績を示しそれはGEMが活性化するEGFR-ERKシグナルを抑制するためと考えられた.axitinibARB等は癌微小環境において血管新生を抑制しt GEMとの供用で特に生存期間を延長した.4.GEM投与を受けた膵癌患者の中でARB内服群の生存成績は良好であった.そこで我々は進行膵癌患者に対しGEM+ARBの第1相臨床試験を行いさらに第2相臨床試験へと進めている.【結論】臨床像をよく近似する遺伝・子改変モデルを用いることにより臨床応屠可能な知見が得られ実際に基礎から臨床への展開が可能になると考えられるまた実臨床からモデルへ戻って解析することも可能である.このような基礎と臨床の有機的かつ能動1的統合を進めていくことが膵癌克服の実践のために必要と考える.
索引用語