セッション情報 シンポジウム9

疾患モデル動物を用いた消化器病研究の最前線

タイトル

S9-8 腸腫瘍幹細胞特異的マーカーDcamkl1の同定

演者 中西祐貴(京都大学大学院消化器内科学)
共同演者 上尾太郎(京都大学大学院消化器内科学), 妹尾浩(京都大学大学院消化器内科学)
抄録 【目的】近年腫瘍には正常幹細胞と類似した性質を持つ腫瘍幹細胞(tumor・stemcell : TSC)が存在し腫瘍子孫細胞を供給し続けるモデルが提唱されているTSCマーカー候補は多数報告されているがその大半は正常島細胞にも発現している.癌治療に際してそれらを標的とした場合正常組織に重大な障害をもたらす可能性が高いことが予想されるためTSC特異的マーカーの同定が急務である.今回我々は腸管幹細胞マーカーの候補とされるDcamk11に注目し正常腸管と腸腫瘍におけるDcamkll陽性細胞の意義について種々の遺伝子改変モデルマウスを用いて検討を試みた.【方法】Dca皿kllプロモーターの下流にCreERT2-IRES-EGFP配列をノックインしたマウス(Dcan]Jd1-Creマウス)を作出しRosa26Rマウスおよび代表的な腸腫瘍形成モデルであるApcMinマウス等と交配した.これらのマウスの腸管および腸腫瘍において種々の免疫染色およびタモキシフェン投与によりDca皿kll陽性細胞およびその子孫細胞を青く染色するHneage tracing解析を行った。 r成績】Dcamk11-Cre/Rosa26Rマウスの正常腸管ではタモキシフェン投与により青色のDcamkll陽性細胞は+4positio且などに疎に出現したが子孫細胞の供給は認めなかった.一方Dcamk11-Cre/Rosa26R/ApcMinマウスの腸腫瘍ではタモキシフェン投与1日目からDcarnk11 Wa性細胞か.ら索状に連続する青い腫瘍子孫細胞の供給が認められ5日目には腫蕩全体が青色の子孫細胞によって占められていた.これらの「青い腸曲蕩」はマウスを観察し得た105日1目まで残存していた.重要なことにDcamk11-Cre/(Rosa26R/ApcMinマウスの正常腸管部では青色のDcamk且陽性細胞は疎に出現するのみで子孫細胞の供給は認めなかった.【結論】マウス腸管でDcamk11は正常腸管幹細胞を標識せず腸腫瘍幹細胞のみを標識するTSC特異的マーカーであることが示されたDcamk11.陽性細胞を治療標的とすることにより正常組織への障害のない理想的な「癌幹細胞治療」1につながる可能性が示唆された.
索引用語