セッション情報 シンポジウム9

疾患モデル動物を用いた消化器病研究の最前線

タイトル

S9-9 2種類の遺伝子不安定性大腸癌の新規マウスモデルの作製とその解析

演者 檜井孝夫(広島大学消化器外科学)
共同演者 佐々田達成(広島大学消化器外科学), 大段秀樹(広島大学消化器外科学)
抄録 (背景)大腸癌の発生機序としてadenoma-carcino鵬a sequenceが知られているが近年これらの中に遺伝子不安定性の形式により2種類のpathwayが存在する事が示唆されている.一つは染色体不安定性(CIN)のよる発癌形式でもう一つはマイクロサテライト不安定性(MSI)による発癌形式である.いずれもAPCを含むWntシグナル伝達系の異常がトリガーとなるがその後異なった遺伝子群に変異が蓄積して癌化が進むためその生物学的動態や化学療法にたいする感受性は異なる.私共はこれまで腸上皮細胞特異的ホ佃戸ボックス転写因子CDX2の消化管癌における発現機構解析の過程でCDX2のプロモーター領域にマウス大腸上皮細胞特異的転写活性領域を同定しそれを利用した臓器特異的コンディショナルAPCノックアウトマウスを作製してCIN型とMSI型の2種類の新規大腸癌マウスモデルの作製に取り組んできた(方法)大腸上皮特異的転写活性配列CDX2P9.5kbをつかって大腸上皮特異的コンディショナルApcノックアウトマウス(CPC’Apc’fO’Pヘテロ)とマイクロサテライト不安定性を利用した発現誘導型大腸上皮特異的コンディショナルAρeノックアウトマウス(CDX2P-G22て:re ; ApchabiexPホモ)を作製しt発生した腫瘍の解析を行った.(結果).CPC’Apc t・jin:PマウスではAρcのLOHにより遠位大腸を中心に大腸癌が発生しDNAメチル化と異数性が認められた.腫瘍は粘膜下に浸潤しており左側大腸癌モデルとして有用であることが示唆された.一方CDX2P-G22-Cre : ApctU’P’la「Rマウスでは生後早期より盲腸から近位大腸を中心に腫瘍の発生を認め右側大腸癌モデルとして有用であることが示唆された.(結語)CIN型およびMSI型の2種類の新規マウス大腸癌モデルの確立によって癌幹細胞や微小環境免疫応答に関する様々な基礎研究を生理的条件下で検証でき大腸癌研究の新たな展開が期待できる.
索引用語