セッション情報 パネルディスカッション3

日本消化器病学会診療ガイドライン(NASH・NAFLD)を目指して 基調講演

タイトル

PD3-1 NASH/NAFLDの動向

演者 坪内博仁(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科消化器疾患・生活習慣病学)
共同演者
抄録 最近非B非C型肝細胞癌の患者数が増加し肝細胞癌の20%を超える.これら非B非C型肝細胞癌の原因は主として非アルコール性脂肪肝炎(NASH:)に由来すると考えられている.検診受診者における肝機能異常者の頻度も30%に近くそれらの大部分はNASHを含む非アルコール性脂肪性肝疾患(NAF:LD)と考えられる.検診受信者における脂肪肝の頻度は男性が女性よりも高く30歳以上では40%に達する.脂肪肝の頻度は肥満と関連している.男性ではBMIが23-25Kg/m2であっても脂肪肝は40%近くに達しており女性がBMI 25Kg/m2以上になって約40%になることと状況が異なっている.脂肪肝の発生にはメタボリック症候群が密接に関連するが喫煙も関連する.NASHの発症機序として遺伝肥満高脂血症糖尿病などのfirst hitにより脂肪肝が生じそれにインスリン抵抗性酸化ストレスTNF一αをはじめとしたサイトカインなどのsecond hitが加わってNASHに進行すると考えられている.First hitとsecond hitは明確に区別できるものではなくこれらの要因が相互に作用してNAFLDの病態を形成し進展させる. NASHの確定診断には肝組織所見が必須でその特徴は脂肪沈着に加えて風船様変性Manory体形成線維化である血液生化学検査ではAST/ALT上昇線維化マーカー高値HOMA-IR上昇血清フェリチン上昇に加えてTNF一αやレプチンの増加アディポネクチンの低下チオレドキシンが上昇する.体重減少はNAF:LDの病態改善に有効であり食事療法と運動療法の生活習慣の改善が治療の基本である.とくに単純性脂肪肝は生活習慣の改善が中心である.糖尿病高脂血症高血圧などが合併する患者ではそれらを治療する.インスリン抵抗性改善薬糖尿病および高脂血症治療薬降圧薬(ACE阻害薬やARB)などの効果が報告されている.慢性肝疾患の治療薬であるウルソデオキシコール酸強力ネオミノファーゲンシーCビタミンCEなどのNAFLDに対する効果も報告されている.しかし治療法は未だ確立されていないのが現状である.
索引用語