セッション情報 パネルディスカッション3

日本消化器病学会診療ガイドライン(NASH・NAFLD)を目指して

タイトル

PD3-10 NASH・NAFLD治療Mini Review

演者 竹井謙之(三重大学消化器内科)
共同演者 杉本和史(三重大学消化器内科), 藤田尚己(三重大学消化器内科)
抄録 NAFLDINASHに合併する肝のインスリン抵抗性やサイトカインおよびアディポカインネットワークのひずみが代謝の変調をきたし糖尿病脂質異常症高血圧動脈硬化の発症に関わることが明らかになり消化管・膵・肝を機軸とする機能連関の変調はそれ自身の異常にとどまらず.メタボリックシンドロームの発症に大きな役割を果たすことが理解される現在NAFLDに対して確立した薬物療法はなく治療の基本は食事療法と運動療法を行い内臓肥満やインスリン抵抗性を改善させることにあり生活習慣病の予防とともにNASHへの進展を阻止する点でも重要である.また運動療法は減量とは独立してそれ自体が肝脂肪化肝機能を改善するとされる.NASHの薬物療法に関して現在多くの臨床研究が展開されており新しいエビデンスが登場しつつあるチアゾリジン誘導体ピオグリタゾンをNASH症例に96週間投与した前向き研究では線維化を除く病理組織像の有意な改善が示された.アンギオテンシンH(ATn)は肝線維化促進作用を持つがその作用を阻害するATIIタイプ1受容体拮抗剤(ARB)の肝線維化獅制作用が報告されている.コレステロールトランスポーター阻害剤エゼチミプはトランスアミナーゼと肝脂肪含有量の低下線維化の抑制効果を持つことが示されている.スタチンやフィブラート系薬剤もNASHに対して有効性が報告されている.NASH症例の多くが糖代謝異常や高血圧脂質異常症を合照することから上記の薬剤が今後広く用いられる可能性があるTNFu産生抑制作用を持つメトフォルミンや抗酸化剤ビタミンEをはじめとするビタミン群イコサペント酸エチルプロバイオティクスなどパイロットスタディにてNAFLD/NASHへの有用性が示唆される薬剤は他にも多い.一方NASHでは鉄集積がみられt酸化ストレス増大が病態惹起の基盤となるため除鉄療法の有用性が検討されている.これら治療法の有効性は評価が定まったものではなく今後長期予後に及ぼす有効性や安全性など質の高いエビデンスの創出が待たれる.
索引用語