抄録 |
診療ガイドラインはそれぞれの疾患の診療を行うために必要な中立で質の高い診療情報を提供するために作成されている.機能性消化管障害の代表的な疾患である機能性ディスペプシア(FD)と過敏性腸症候群(IBS)は有病率重要性ともに高く消化管疾患の中でも重要視されている疾患である.ところがこれらの疾患を診断治療することは必ずしも容易ではなく器質的疾患を有する例との鑑別に頭を悩ますことがある.また一般的治療に反応しない難治例への対応に困り果てることも少なくない.そこで臨床医にとってFDとIBSの診断治療に関して現在存在するエビデンスを正しく評価しここから得られる診断や治療の望ましい方向性を示す診療ガイドラインが必要であろうと考えられる.ただ機能性消化管障害はまだその病因・病態が完全に解明されているわけではなく診断においても治療においても多くの議論がたたかわされている領域でもあるためガイドラインの作成は容易ではないと予想される.消化器病学会ではFDIBSのガイドラインを作成することの困難さを十分に把握した上で診療の現場でこれらの疾患が持つ重要性を考慮し診療ガイドラインを作成することを決定した.FDもBSも症状の出現とそれに伴うQOLの低下が重要な疾患であり治療の成否は患者の症状とQOLの改善にかかっている.このため診断においても治療においても従来用いられてきたエビデンスレベルの判定基準を修正し二重盲検研究の重要性など新たな判定基準を追加することも必要であろうと考えられる.基調講演ではFDとIBSの診療ガイドラインの作成時に遭遇すると予想されるこれら疾患の特殊性について解説したい. |