セッション情報 パネルディスカッション5

日本消化器病学会診療ガイドライン(大腸ポリープ)を目指して

タイトル

PD5-6 消化管ポリポーシスの特徴と診療ガイドライン

演者 松本主之(九州大学病態機能内科学)
共同演者
抄録 消化管ポリポーシスとは同一の組織像を有する隆起が消化管に多発し多彩な消化管外徴候を呈する症候群の総称であり大腸が主な罹患部位である.腺腫性ポリポーシス過誤腫性ポリポーシスその他のポリポーシスに大別され悪性腫蕩の高危険群と考えられている腺腫性ポリPt一シスは大腸腺腫が多発し大腸癌を発症する疾患でありAPCのヘテロ変異に起因する家族性大腸腺腫症(FAP)が代表的疾患である.しかしAPC変異陽性かつ100個以下の腺腫にとどまり高齢で大腸癌を発症するattenuated FAP(AFAP)も存在する.FAPでは上部消化管骨皮膚眼甲状腺副腎などにも腫瘍状病変がみられ一部は悪性化する一方APC変異陰性の腺腫性ポリポーシスのなかに酸化DNA修復直伝子MUTYHの両側変異陽性例が存在しMUTYH閾連ポリポーシス(MAP)と呼ばれている.臨床像として劣性口伝の形式を示すこと。FAPよりも大腸腺腫数が少ないこと過形成性ポリポーシスを呈する症例が存在することなどが挙げられる.腺腫性ポリポーシスの治療では全大腸切除術が第一選択となる.ただし手術の適応や術式は慎重に選択すべきであり大腸切除後も生涯を通じて他臓器の悪性腫瘍に対するサーベイランスが必要となる.一方過誤腫性ポリボーシスにはPeutZ-Jegh-ers症候群(PJS)若年性ポリポーシスCowden病などが含まれいずれも常染色体優性遺伝の形式をとり原因遺伝子の一部も明らかになっている.またこれらの疾患は全身諸臓器の悪性腫瘍の高危険群であり慎重な全身サーベイランスを要する.以上のように消化管ポリポーシスは特徴的な臨床像を呈する疾患群であるがいずれの疾患も比較的稀である.従って診療ガイドラインとしてはFAPとPJSに関するものが欧米で報告されているのみである.そこで各疾患を概説し現在作成中の大腸ポリープ診療ガイドラインにおける消化管ポリポーシスの項目の進捗状況について述べてみたい.
索引用語