抄録 |
【目的】我が国では高齢化社会や食生活の欧米化に伴い大腸憩室症が増加しており臨床の場で憩室炎や出血を経験する機会が増えているがその現状については情報が少なく明らかではない.今回は我が国の大腸憩室炎に対する治療の現状を明らかにすることを目的とし検討を行った.【方法12006年1月から2011年5月の期間に全国16施設において画像(CTあるいはUS)で大腸憩室炎と診断した1251症例を対象に後ろ向き調査を行い施行された治療について調べた.【結果】全症例中で死亡例は10例(O.80%)であり基礎疾患を有し消化管穿孔を合併した外科手術症例が多くを占めていた.重篤な合併症(穿子し膿瘍形成)を認めた191症例では98例(51.3%)に外科手術6例(3.1%)にドレナージ術が施行されt残りは保存的治療(抗菌薬投与)が施行されていた手術例は人工肛門造設を含め開腹術が過半数であった競腹腔鏡を用いた手術も行われていた.入院期間は4-123日と相違が大きくまた軽症例と比較して長期化する傾向を認めた.軽症例に対してほとんどはセフェム系やカルバペネム系薬剤が経静脈的に投与されていたが38例(3.6%)は経ロ抗菌薬の投与のみで改善していた.入院期間は2-91日とやはり幅が大きく多くは10日以内の短期で退院可能であったがt2週間を超える症例も1割程度存在した.【結論】憩室炎に関連した死亡例には基礎疾患や重篤な合併症などが関与していることが多かった.重症例に対しては主に人工肛門造設など外科的治療が行われていたが保存的治療や超音波下ドレナージで改善する症例も少なからず存在した.軽症例では広域スペクトラム抗菌薬の経静脈的投与が標準的であったが経過中の基礎疾患の増悪などによる長期入院例も多く留意する必要がある.本報告は多施設における検討であり我が国の憩室炎治療の現状を示す貴重なデータと考えられた |