セッション情報 ワークショップ4

肝再生医療への展望

タイトル

W4-1 肝再生抑制機構の解明とそれに基づく新戦略の構築

演者
共同演者
抄録 【目的】肝臓は再生能力が強くこの能力により肝癌に対する大量肝切除も可能である同時に再生不良による術後肝不全を引き起こす可能性も併せ持つが有効な肝再生促進法は確立しておらずさらなる肝再生機構の解明と新規治療戦略の構築が必要であ.る.TGF一βはin vitroで強力な肝細胞増殖抑制因子であるがTGF一βシグナルが再生肝でどのように機能するかは未だ不明である.1)TGF一一βは生体内で不活化型として合成される2)局所のTGF一βシグナルは不活化型を活化型へ変換する活性化機構によりコントロールされるが再生肝における機構は未だ不明であることよりTGF一β活性化因子であるThrombospolldin 1(TSP1)に着目したここに再生肝におけるTGF一βの機能発現に活性化因子TSP1が関与することを明らかにし新たな再生抑制因子としてTSP1を同定したので報告する.【方法】野生型マウスで70%肝切除を行い再生肝でのTSP1発現に関して分子生物学的手法を用いて検討した。TSP1欠損マウスで70%肝切除を行いTGF一βシグナル変化および術後肝再生能について野生型マウスと比較検討した.【結果】TSP1は再生肝の血管内皮細胞で術後早期に発現しその発現に引き続いてTGF一β一Smadシグナルの活性化を認めた. ln Vitroにおいて血管内皮細胞のTSPI発現は活性酸素によって誘導されscavengerであるN・一acetylcysteineの投与により阻害された直後早期に活性酸素の産生を認め生体内でのTSP-1発現への関与が考えられた.一方TSP1欠損マウスでは術後のTGF一β一Smadシグナルの活性化が抑制され再生肝でのp21蛋自の発現抑制術後早期での肝細胞へのBrdUの取り込み増加ひいては肝/体重比の早期回復を認めた.【結謝肝切除の生体ストレスにより産生された活性酸素は血管内皮細胞にTSP1を発現誘導し強力な肝再生抑制因子であるTGF一βシグナルの活性化を介して術後肝再生を負に制御する.術後早期におけるTSP1をターゲットにした肝再生促進の新規治療戦略が考えられる.
索引用語