抄録 |
【目的1飲酒の膵障害の病態に及ぼす影響を明らかにすることは医学的社会的に国民の健康を長期的に改善する手立てを考えるうえで重要である.本研究は急性膵炎や慢性膵炎の病態におけるアルコールの役割を明らかにすることを目的とする.【方法】全国の日本消化器病学会認定ならびに関連施設に調査票を送付し平成18年4月1日より平成22年3月31日までの問に入院した急性膵炎と慢性膵炎患者を対象とした症例対照研究を実施した.対照は同じ病院を受診した患者から性t年齢(±5歳)t初診時年月日(±1年)を合わせて無作為に抽.出した.統計解析はロジスティック回帰分析を用い発症年齢の比較はStu-dent’s t-testによって検討した.なお本研究は東北大学医学部倫理委員会の承認のもと行った.【結果】症例は急性膵炎571例慢性膵炎397例の合計968例であり対照群計1005例と比較検討した急性膵炎ではエタノール換算で1日平均4〔}一一79gを飲酒した者1のオッズ比が1.7(95%信頼区間:1.2-2.5)80g以上飲酒した者のオッズ比が3.4(95%CI:2.3-5.1)であり飲酒に伴い急性膵炎のリスクが上昇した.慢性膵炎でも40-79g飲酒した者のオッズ比が4.2(95%CI:2.7-6.5)80g以上飲酒した者のオッズ比が12、0(95%CI:7.3-19.5)であり慢性膵炎のリスクも顕著に上昇した.アルコール性急性膵炎患者のうち非喫煙群の発症年齢は53.0封7.0歳(平均値±標準偏差)喫煙群は46.1土132歳であり喫煙群のほうが6.9歳若年であった(pニ0.007).アルコール性慢性膵炎では非喫煙群の発症年齢は55.5±11.0歳喫煙群は50.5±14.4歳であり喫煙群のほうが5.0歳若年であった(pヨ0.04).【結論】飲酒が急性膵炎および慢性膵炎のリスクを上昇させることが定量的に示された.また喫煙はアルコール性膵炎の進展を加速させると考えられた. |