セッション情報 ワークショップ6

IPMNの国際診療ガイドラインを巡って 指定講演

タイトル

W6-1 IPMNについての日本と欧米での考え方・取扱いの違い―病理の立場から

演者 福嶋敬宜(自治医科大学病理診断部)
共同演者
抄録 膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)に関する我が国における病理学的知見は大橋らが粘液産生膵腫瘍として報告した時から詳細な病理一画像相関の検討から地道に蓄積されてきている一・方で欧米からのIPMNに関する研究報告も次第に増えてきて名称枠組みさえも変えられてきた経緯がある.そんな中で国際診療ガイドライン作成の提案と実現は大きな意味を持つものであった.本発表では日本と欧米における病理診断基準の違いや病理学的検索方法の違いについて紹介し病理学的立場から国際診療ガイドラインについて言及する.IPMNの病理についてはPanlN/IPMN国際会議についての論文報告が2004年(Am J Surg Pathol)に発表されそれを反映したPMN/MCN国際診療ガイドラインが2006年AFIP分類が2007年新WHO分類が2010年に発行された.このような流れの中で病理学的事項については概ね国際的なコンセンサスが得られつつあるように感じられるが組織異型度の診断基準に関する見解の違いなどは依然として見られる上記国際分類では膵管内腫瘍は膵管内にとどまる病変のみを指し「非浸潤癌」の概念は排除している膵管外に浸潤したものに限って「癌」と認め「IPMN with an associated invasive carcinoma」と表現している.このような違いは膵腫瘍だけのものではなく病理診断に関する「哲学」の違いもしくは「リスク管理」の視点からのもののようでもありそれぞれの立場を尊重しそれぞれの解釈にゆだねるべき部分とも思われる日本の病理学的検索法は「切り出し図」に象徴的に表れている.我々日本で育った病理医にとっては「切り出し図」は病変の組織学的再構築を行い画像との対応を考える際に必須と考えるが欧米(特に米国式病理学)にはないようである.このようなキメの細かな検索法は日本の病理学の大きな特長であり病理医も臨床医もその価値を再認識しそこから導き出される知見を今後も積極的に主張していくことが強固な国際的コンセンサスにつながっていくものと考えられる.
索引用語