セッション情報 ワークショップ8

消化器癌の免疫学的解析と治療

タイトル

W8-3 膵癌腫瘍微小環境におけるSemaphorin 4Dシグナルの解析

演者 加藤真吾(横浜市立大学消化器内科)
共同演者 窪田賢輔(横浜市立大学消化器内科), 中島淳(横浜市立大学消化器内科)
抄録 1背景】ISemaphorin4D(Sema4D)は乳癌組織において腫瘍関連マクロファージに発現している分子であり癌細胞上の受容体PleXinBlを介して癌細胞の浸潤能を増強させることが報告されている我々はtこれまでに膵癌におけるSema4D経路の解析を行ってきた.膵癌組織中ではSema4D発現細胞がリンパ球であるという相違点を認めたがリガンドとしてのSema4Dの機能は乳癌の場合と同じであり浸潤能を増強させた(Kato.S et aL Cancer Science 2011).以上からSema4Dは癌の増殖・進展に促進的に働くと予想された.しかしi1 viVO解析でこの経路の抗腫瘍免疫系への関与という新事実が判明したため今回報告する.【方法】sema4Dノックアウトマウス野生型マウスにそれぞれマウス膵癌細胞株を移植し腫瘍形成を比較する.【結果】過去の報告ではSema4Dノックアウトマウスでは乳癌細胞株の腫膓形成が著しく阻害されたとされている.しかし我々の解析でSema4Dノックアウトマウスに膵癌細胞株を移植したところ腫瘍形成が著しく増強されるという乳癌の報告とは反対の結果が得られた.この原因について詳細な解析を行ったところSema4Dノックアウトマウスでは腫瘍内へのCD8+T細胞の浸潤が著しく抑制されていることが判明した.【考察】Sema4Dは免疫Semaphorinとも呼ばれ免疫系において免疫調節能を持つと報告されている。今回の結果は膵癌では免疫抑制の表現型がより強く表れたためと考えられた.これまでの我々の解析で膵癌細胞上のPkeXinBlをノックダウンするとSema4Dシグナルを阻害できることを示している.そしてSema4Dの免疫系における受容体はCD72でありPleXii[B1ではないことが報告されている.現在この作用する経路により異なる受容体を介するという性質を利用し分子標的治療への応用を検討している今風腫瘍微小環境において抗腫瘍免疫活性化及び癌細胞への浸潤シグナル供給という相反する作用を持つSema4Dについてその作用と治療応用の可能性について報告する.
索引用語