| 抄録 |
【目的】小腸上皮トランスポーターによる薬物吸収・排出を簡便に評価する技術が期待されている本研究では正常小腸上皮細胞の3次元培養技術を利用しトランスポーター分子MDR1を介して薬物が小腸上皮基底側から管腔側へ排出される機構を解析した．【方法】3次元的に培養した正常マウス由来小腸上皮でのMDR1遺伝子発現を検討した極性を保ち維持される小腸上皮オルガノイドにおいてMDR1の基質であるrhodamine123（Rh123）の基底側から管腔側への輸送を蛍光顕微鏡で観察した．薬剤注入路をもつ閉鎖腔内で小腸上皮を培養する手法を確立しRh123輸送をリアルタイムで観察するシステムを構築した．これを利用しMDR1機能の特異的阻害薬の投与がRh123輸送に及ぼす影響を解析した．【結果】小腸上皮細胞が培養中もMDRI遺伝子発現を維持することがわかった．また培地中に添加されたRh123は上皮細胞により基底膜側（外腔）から管腔側（内腔）へ輸送され培養小腸上皮におけるMDR1が実際に薬剤排出機能を持つことが示された．リアルタイム観察によってRh123添加直後から内外の濃度が平衡化するまでの可視化が可能となりRh123排出初期速度および平衡時における内訓／外腔薬剤濃度比が解析可能であった．さらに特異的阻害剤併存下でのRh123輸送機構の解析より本システムがMDR1機能とこれに対する阻害薬剤解析に有用であることが示された．【結論】正常小腸上皮培養を用いる新しい薬剤排出解析技術がMDRI分子機能とこれに対する阻害薬の評価に有用であることが示された．本技術の応用によりMDRlを介する薬剤排出機構解析tあるいは異なる個人の小腸上皮を用いる個別化解析が進むことで新規薬剤開発や薬物動態解析に有用なツールとなることが期待される |
