セッション情報 ワークショップ9

小腸生理機能の基礎医学的解明

タイトル

W9-3 クローン病における肝の薬物代謝活性低下のメカニズム

演者 岩本淳一(東京医科大学茨城医療センター消化器内科)
共同演者 本多彰(東京医科大学茨城医療センター消化器内科), 松崎靖司(東京医科大学茨城医療センター消化器内科)
抄録 【目的】クローン病(CD)と潰瘍性大腸炎(UC)の発症にt薬物代謝酵素CYP3A4や薬物排泄トランスポーターMDRIの発現を促進する核内レセプタ’一 Pregnane X receptor(PXR)の遺伝子変異が関与するとの報告がある(Gastroenteroiogy 130:341;2006).我々は実際にこれらの編輯患者でCYP3A4活性に異常があるか否かを調査し炎症性腸疾患と薬物代謝能との関連を検討した.【方法】小腸型CD(20例)UC(10例)正常対照(20例)の血清を用いて全身のCYP3A4活性マーカーである4β一ヒドロキシコレステロール(4β一HC)と25一ヒドロキシコレステロール(25-HC)上部小腸からのコレステロール吸収マーカーであるシトステロールとカンペステロールおよび肝臓での胆汁酸合成マーカーの7α一ヒドロキシー4一コレステンー3一オン(C4)をLC-MS/MS法で分析した.また回腸での胆汁酸吸収マーカーのFGF19濃度をELISA法にて定量した.【成績】CD群では4β一HCと25-HC濃度が対照群の約1/2に低下していたがUC群では低下していなかった.またCD群ではFGFI9濃度の低下とC4濃度の上昇を認めたがUC群では変化がなかった一方シトステロールとカンペステロールの濃度はCDUC群共に変化がなかった.【結論】小腸のCYP3A4発現は上部小腸に多いがその量は肝臓の1/100とされていることからCDでは肝臓を中心とした全身のPXRの不活性化によってCYP3A4活性が抑制されているものと考えられた、UCでは同様の所見を認めないことよりPXRの遺伝子変異以外の原因が存在するものと推測された.PXRを活性化するリガンドの1つが胆汁酸でありCDでは胆汁酸の再吸収障害が肝臓でのPXR不活性化を引き起こしている可能性が示唆された.肝臓の薬物代謝能にも小腸機能が密接に関わっていることが明らかになった.
索引用語