セッション情報 ミニシンポジウム3

好酸球性消化管障害をめぐって 基調講演

タイトル

MSY3-1 好酸球性消化管疾患の現状―全国調査の解析結果から―

演者 石原俊治(島根大学医学部内科学講座第二)
共同演者 木下芳一(島根大学医学部内科学講座第二)
抄録 好酸球性消化管疾患(eosinophilic gastrointestinal disorders:EGIDs)は食餌抗原などの刺激によって消化管局所でinterleukin(IL)一51315eotaxinなどのサイトカイン産生が誘導され好酸球浸潤やマスト細胞の活性化を介して消化管上皮に傷害をおこすアレルギー疾患であると考えられている.本邦ではEGIDsに関するまとまった報告は少なくその多くが症例報告である.最近日本におけるEGIDsの現状把握を目的に厚生労働省の班研究(木下芳一班長:好酸球性食道炎/好酸球性胃腸炎の疾患概念の確立と治療指針作成のための臨床研究)が実施された.消化器科の診療をおこなっている医師病院を対象として実態調査を施行したところ2006-2010年までに診断された144例が集積された.平均年齢は46歳(7-85歳)で男女差はなかった.病変が存在する部位は食道9%胃31%小腸72%大腸41%であり症状としては腹痛下痢が50%以上の症例で認められていた.アレルギーに関連した病歴を有する頻度は喘息61%鼻アレルギー/花粉症22%薬物アレルギー15%食物アレルギー14%であった.血液検査では500個/μ1以上の末梢血好酸球増多は85%に認められた.内視鏡所見はびらん発赤浮腫の順に多かったが40%の症例でこれらの所見全てが観察された.治療としては75%の例にグルココルチコイドが使用されており一時的なものも含めてほぼ全例で有効性が示されていた.研究班でのデーター解析によって現在までに“好酸球性胃腸炎の診断指針”が作成されているがEGIDsの現状把握において今回の症例集積が必ずしも十分とはいえない.今回の講演では班研究の結果の詳細について報告するとともに病態把握を含めた今後の課題について考察する.
索引用語