セッション情報 | パネルディスカッション25(消化器内視鏡学会・消化器病学会・消化器がん検診学会合同)H. pylori 除菌後長期経過による内視鏡像の変化 |
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タイトル | 消PD25-8:Helicobacter pylori 除菌後発見胃癌の腫瘍表層に出現する低異型度上皮 |
演者 | 松尾 泰治(広島大大学院・分子病態制御内科学) |
共同演者 | 伊藤 公訓(広島大大学院・分子病態制御内科学), 茶山 一彰(広島大大学院・分子病態制御内科学) |
抄録 | 【背景、目的】これまで我々は、既存の胃腫瘍症例にHelicobacter pylori (H. pylori )除菌治療を施行し、除菌成功後短期間において胃腫瘍表層に特徴的な低異型度上皮が出現することを報告した(Ito et al. AP&T 2005)。また除菌治療後に発見された胃癌は、病理学的に通常胃癌と異なる性格を有することを報告した(Matsuo et al. Digestion 2012)。今回我々は、除菌後発見胃癌における腫瘍表層低異型度上皮について検討し、その臨床的意義について考察した。 【方法】対象は1998年から2011年3月までに、H. pylori 除菌成功後1年以上経過観察ののちに診断された胃癌症例27例(男性20例、平均年齢64.9歳)。そのうち、病理組織学的に検討可能であった分化型腺癌21例を最終検討対象とし、胃腫瘍表層部の低異型度上皮を組織学的に評価した。低異型度上皮の広がりをスコア化し、組織型、進達度をマッチしたH. pylori 陽性対照胃癌症例と比較した。粘液発現(HGM, HIK, MUC2, SIMA)については、免疫組織化学的に検討した。 【結果】除菌後発見胃癌において、低異型度上皮は17例(81%)に認められ、特に除菌後10年以上経過して発見された胃癌で顕著であった。除菌後発見胃癌での腫瘍表層低異型度上皮の出現頻度は通常胃癌と比し、有意に高頻度であった。低異型度上皮は腫瘍周囲の非腫瘍性粘膜との連続性はなく、腫瘍組織と連続するように孤立散在して認められた。この粘膜の粘液発現パターンは腫瘍本体とは異なり、胃型粘液であるHGMを高頻度に発現していた。 【考 察】H. pylori 除菌後胃癌の表層部には、特徴的な低異型度上皮が出現しており、拡大内視鏡観察における範囲診断のみならず、切除後の腫瘍組織診断に影響を及ぼす可能性がある。 |
索引用語 | H. pylori, 除菌後発見胃癌 |