抄録 |
(目的)下部消化管機能障害に対する外科治療の位置付けはなされていない.今まで外科治療の対象となってきたのは慢性便秘症亜イレウス状態を繰り返す術後腸管癒着症盲管症候群などであった.今回slow transit constipatiQnに対する外科治療に関する自験例と文献より外科治療の役割を考察したので報告する.(方法)下部消化管機能障害に対する保存的治療が無効のため11例に外科治療を施行した.検査として腸管移送時間測定排便造影直腸肛門内圧検査を実施した.これらの検査結果より術式を選択した.また2001年から2010年までの外科治療に関する文献16編を集めて検討した.(結果)自験例11例(女性6例)の平均年齢は43歳鏡心期間は16.8(5-30)年排便回数は6.5日に1回排便時間は102分であった.術式は結腸全摘・回腸直腸吻合術6例、結腸全摘・回腸ストーマ造設術3例大腸全摘・回腸ストーマ造設術1例S状結腸切除術1例であった術後の排便回数は1日4.3回分改善し腹痛が持続しているのは6例で5例に術後イレウスがあった.精神疾患を有する2例が社会復帰できていない文献的にはprospectiveな報告はなくevidence levelの高い論文はなかった.報告されている症例数は1編につき5~79例であった.外科治療の適応としては大腸移送時間遅延が正常の3こ口たは72時間以上に及び盤陀期間が5年以上で保存的治療が無効の場合とされている.上部消化管機能障害精神疾患があると緒果がよくないが直腸からの排出障害合併では大腸全摘箭.ストーマ造設術など術式を工夫していた.術後経過としては腹部膨満感の改善度は大きいが腹痛の軽快率に差はあった.16編の論文中1編は外科手術の役割に否定的であるが他の15編は一定の役割があることを主張している.(結論)下部消化管機能障害のうち機能的便秘症に対して保存的治療が無効の場合には排便回数の改善や腹部膨満感の軽減などの一定の役割はあると思われるしかし精神的サポートが得られる専門的な施設での実施が望ましいと思われた. |