抄録 |
[目的]膵癌は予後不良な疾患であり治療成績向上と予後の改善のためには早期発見が重要である.当院にて切除治療し得たTS1膵癌症例を検討し膵癌早期診断に重要な因子を解析する.[対象]2006年1月~2011年8月までに当院で手術を施行し膵癌と診断された135例の内TS1膵癌29例(21%)(男性13例女性16例平均年齢71歳)を対象とした.〔方法]疾患背景(占拠部位大きさ進行度MST)、リスク因子の有無発見契機腫瘍マーカー画像の特徴(USCTMRI)について検討しTS1膵癌の特徴を解析する.[結果]病変占拠部位は頭部14例体部11例尾部3例全体1例平均腫瘍サイズは16.6mm(2.5-20)であった.進行度はstage14例H3例M9例IVa9例IVb4例でMST1340日(13-1803)であったリスク因子は癌既往6/29(20%)耐糖能異常11/29(38%)慢性膵炎2/29(7%)tIPMN3/29(10%)であった.発見契機は無症状例が15/29(52%)と半分を占め糖尿病をもつ患者が11例(38%)と多くリスク因子のない検診ドックでの発見例は1例(3%)であった.有症状例は14例(48%〉で腹痛7例黄疸5例背部痛1例めまい1例であった.診断のきっかけとなった検査は腫瘍マーカーの異常6例エコー6例CT16例MRII例であった.腫瘍マーカー上昇はCEA叡29(17%)CA19-9 20/ZZ(71%)DUPANIO/25(40%)SPANO/3(0%)でCA19-9の陽性率が高い傾向を認めた.画像検査所見は腫瘤描出はエコー12/16(75%)CT25/29(86%)MRI18/20(90%)主膵管拡張または狭窄はエコー11/16(68.7%〉CT25/29(86%)MRI17/20(85%)であり小膵癌は腫瘤描出が晒稀な例もあり間接所見にも留意することが重要であると考えられた.腫瘤描出が困難であった2例(2.5mm14mm)はERP下の擦過細胞診とENPD留置下の連続膵液細胞診で確定診断を得ることが可能であった.[結語]糖尿病患者を対象にCA19-9を中心とした腫瘍マーカーと膵管拡張などの間接所見にも留意して各種画像検査を定期的に施行していくことが膵癌早期発見には肝要である。ENPD留置下の連続膵液細胞診も膵癌早期診断の一助になると考えられた. |