抄録 |
【目的】鳥肌胃炎を含むHelicobacter pylori除菌後の長期経過例を対象とし胃粘膜の形態的,病理学的な変化を検討.【方法】1998年以降に除菌した非鳥肌胃炎61症例のうち約10年間の経過を追えた29症例および2005年から2007年に除菌した鳥肌胃炎28症例(男9例,女19例;平均35.5歳)5年間を対象.胃粘膜変化を観察し腺萎縮境界型の変化はAFIも併用した.びまん性発赤はHemoglobin index(IHb)を用いて定量的に評価.組織学的変化は,体中部と前庭部の大彎から2点生検を行いUpdated Sydney Systemに基づいてスコア化した.【成績】非鳥肌胃炎の腺萎縮境界型は10年間で29例中8例,鳥肌胃炎は5年間で28例中3例に1段階以上改善.非鳥肌・鳥肌胃炎ともにびまん性発赤は1カ月後に80%の症例で消退し3カ月後にはほぼ全例消退.点状発赤はやや遅れて消失し,ひだの腫大は年単位で改善した.非鳥肌胃炎のIHb値は除菌前平均68.5±4.1と高値だが,除菌後1カ月には有意差をもって低下(57.5±4.3),3カ月後は全例60未満(55.0±3.5),さらに10年後でも平均51.5と低値を保った.鳥肌胃炎の5年経過でも同様の結果を示した.非鳥肌胃炎の組織学的検討は,好中球浸潤が除菌前の体部0.7, 前庭部0.6から除菌後1カ月にはそれぞれ0.2, 0.1まで低下し3カ月後にはどちらも0となり10年後も維持した.萎縮は,1年以内に変動は認めないが10年経過では除菌前の体部0.7から0.28,前庭部1.71から1.31へと緩やかに低下.腸上皮化生は,除菌前の前庭部1.68,10年後1.5であり大きな変化は認めなかった.鳥肌胃炎の好中球浸潤もほぼ同様の結果であり除菌後3カ月以降は0となった.萎縮,腸上皮化生の経過もほぼ同様であるが,除菌前のスコアが非鳥肌と比較してきわめて軽度であった.【結論】鳥肌胃炎も非鳥肌胃炎と相違なく除菌後速やかにびまん性発赤が軽減することがIHb値にて定量的に示された.除菌3カ月後にIHb値61未満であれば除菌成功と診断可能であり,その後の長期除菌診断にも有用であることが鳥肌胃炎でも示された. |