抄録 |
【目的】TNBSなどをマウスに注腸する腸炎モデルでは粘膜内でTNBSがタンパクと結合しハプテンータンパク複合体として抗原となりマクロファージに取り込まれT細胞を活性化することにより腸炎が発症するとされているしかし粘膜においてハプテンと区別しハプテンータンパク複合体を観察できないため腸炎発症の機序を検証することは困難であるまた治療効果の判定に利用する際にはハプテンータンパク複合体が形成されていない部位で腸炎の評価をしてしまう危険がある.【方法】タンパク標識などに使用されるNBD一・C1は単独では蛍光を示さずタンパクと結合すると蛍光を示すようになる一方接触性皮膚炎を起こす.NBD-C1をマウスに注腸すれば腸炎を誘発する可能性があり粘膜内で形成されるハプテンータンパク複合体に相当するNBD一タンパク複合体はNBD℃1と区別し蛍光を介して観察することができると我々は考えた.【結果】NBD-Clをマウスに注腸すると腸炎症状と体重:減少を観察できた実体顕微鏡で新鮮大腸標本を観察すると腸炎を認める部位に一致してNBD一タンパク複合体を示す蛍光を認めた.標本を固定し作成したパラフィン切片を顕微鏡で観察しても腸炎を認める部位に一致:してNBD一タンパク複合体を示す蛍光を認めた.Flow eytometryで検討したところNBD一タンパク複合体がマクロファージに取り込まれそのマクロファージがT細胞を活性化することを確認できた.NBD-Cl腸炎で抗IL-6受容体抗体投与の治療効果判定を行ったところNBD一タンパク複合体の形成を蛍光観察により確認できる部位で腸炎の軽減を評価できた.【結論】ハプテンータンパク複合体を蛍光観察できるNBD-CI腸炎モデルは腸炎発症の病態解析に有用であり治療効果判定に利用する際にはハプテンータンパク複合体の形成を確認することで信頼性の高い評価が可能である. |