抄録 |
【背景・目的】胃MALTリンパ腫の多くがH. pylori(HP)感染に伴う慢性炎症を背景としたリンパ装置の腫瘍性増殖であり除菌により60-80%が退縮する一方でHP非感染症例ではそのほとんどが除菌に抵抗性である.近年の染色体分析により除菌抵抗性症例に染色体異常が存在することが明らかとなっている.今後HP感染率が低下していく中で胃MALTリンパ腫全体に占めるHP非感染症例が徐々に増えていくものと考えられその臨床像を把握することの意義が増す.【対象】2010年2月より今日までの間に当院で経験したHP非感染胃MALTリンパ腫の内染色体異常が陽性であった4症例を対象としそれらの臨床像をまとめた.【結果=臨床像1年齢は47歳~73歳で性差は1:1であった.内視鏡肉眼所見(中村分類)では混合型2例表層型2例であったがt.いずれもMALT病変の胃内多発傾向がみられ特に微小病変については非拡大の内視鏡では指摘し得ないがNBI併用拡大内視鏡で指摘し得た微小病変の存在が多数あった.EUSによる深達度診断では粘膜内病変が2例粘膜下層浅層浸潤1例固有筋層浸潤が1例であった.尚微小病変のみを呈する症例では生検による確定診断が困難と予想されたため診断的ESDを行い確定診断に至った症例も存在した染色体分析ではApr2-MALTI染色体転座陽性が3例でありb他1例はトリソミー18を示唆するMALTI過剰コピー陽性であったいずれの症例もHP非感染症例であり除菌治療は無効であったため放射線治療が施行された【結語】染色体分析を施行したHP非感染胃MALTリンパ腫の臨床像を示した深達度が浅い症例においては胃内他部位に微小なMALT病変を随伴しており、非拡大内視鏡での検出が困難な微小病変が多数存在するため治療方針決定の段階で拡大内視鏡による胃全体の詳細な観察が必要と考えられたまた診断的ESDも有用な診断手法と考えられた |