抄録 |
【はじめに】転移性膵腫瘍は特異的な画像所見に乏しく臨床症状も少ないことから診断に苦慮することが多い.組織検査は転移性膵腫瘍の診断および治療方針に大変重要な情報となる.超音波内視鏡下穿胃吸引生検(EUS-FNA)は低侵襲的に膵腫瘤性病変の組織を得ることができる手技である.2010年4月に保険適応となったことを契機に徐々に普及してきた.我々はEUS-FNAにより転移性膵腫瘍を診断しえた3例を経験した.【症例1】47歳女性.胸部CTの異常陰影に対し気管支鏡下翼生検が行われ肺腺癌と診断された.全身精査目的のFDG-PETにて膵鈎部にも集積を認めた. EUS-FNAを施行したところ肺原発巣と同様の免疫染色パターンが認められ肺腺癌の膵転移と診断された【症例2】46歳女性.6年前に腎細胞癌に対する左腎摘出術を受けている術後経過観察目的のCTにて膵尾部に血流豊富な腫蕩を指摘された.内分泌腫瘍もしくは腎細胞癌膵転移の可能性が考えられたがEUS-FNAによる組織診断では淡明な胞体からなる細胞による腫瘍胞巣の増生を認めさらに免疫染色の所見より腎細胞癌の膵転移と診断された.【症例3】59歳女性.1年前に右乳癌に対する胸筋温存乳房切除術および腋窩リンパ節廓清術を受けている.経過観察目的のFDG-PETにて膵頭部に異常集積を認めたためEUS-FNAを行ったところ免疫染色より乳癌の膵転移と診断された.【考察1転移性膵腫瘍は膵臓悪性腫瘍剖検例での3.O一一lo、6%にみられt決して稀な病態ではない単発の場合術後長期生存例もみられることからEUS-FNAによる早期診断は極めて重要となる.我々の経験した3症例はEUS-FNAによる診断が可能であり治療方針の決定に大変有用であった若干の文献的考察を加えて報告する. |