抄録 |
【目的】NASH(Non-alcoholic steatohepatitis)はNAFLD(Non-alcoholicfatty liver disease)の重篤な一型であり脂肪肝の存在とともに炎症細胞の浸潤と線維化の進行を認めるものと定義されている.その病態把握のためにしばしばアミノ酸欠乏食投与動物モデルが使用されるがこの場合肥満・糖・脂質代謝異常を背景に脂肪肝炎が進行するNASHとは異なり個体は低体重・低皮下脂肪のむしろ摂食薩害のモデルといえるものとなる.最近膵ランゲルハンス島の選択的破壊薬物であるStreptozotocin(STZ)投与によりNASH類似の病態が作成可能であることが報告されている.今回我々はSTZ投与マウスを用いてNASH一肝硬変一肝細胞癌の経過に対する抗酸化物質としての水素水の効果を検討した.【方法】NASH一肝硬変一肝細胞癌モデルとしてSTZ投与マウス(STAMマウス)を使用した高脂肪食を摂取した8週置のSTAMマウスを2群に分け以下のように餌を与えた:(1)高脂肪食+通常水(CW群)(2)高脂肪食+水素水(HW群).8週間後に肝臓を摘出し肝表面の腫瘍数および腫瘍径を比較した.また、増殖細胞の核内に認められるPCNA(proMerating cell nuclear antigen)による免疫染色を用いて背景肝における細胞増殖能を比較した.儲果】高脂肪食摂取後16週で両群に腫瘍形成を認めた.腫瘍は組織学的にN/C比の増加核の極性の乱れ細胞配列の乱れを認め肝細胞癌といえる所見であった.肝表面の腫瘍数および腫瘍径はHW群で有意に抑制されていた(p<O.05)。免疫染色ではPCNA陽性率がCW群と比較しHW群では有意に低値であった(p = O:OOO1).【結論】水素水は酸化ストレスを抑制しNASHににおける肝細胞増殖を抑制し発癌を抑制する可能性が示唆された. |