抄録 |
(はじめに)本邦における食道癌は扁平上皮癌が多くその他の組織型はまれであり特に類基底細胞癌は1%以下と非常に頻度の低い組織型である.我々はこの類基底細胞癌の10切除例を経験したのでその治療成績につき検討した.(対象と方法)2005年1月から2010年12月までに切除標本の病理組織学的な検討で類基底細胞癌と診断された110例を対象としこれら症例の臨床病理組織学的因子および予後の検討を行った.(結果)対象は男性6例女性4例で平均年齢63.2歳であった.主占居部位はUt:1例Mt=5例Lt=4例で.肉眼型は3型が4例でその他lpl型:3例1sep型;2例1c型:1例で隆起型が多かった.術前の内視鏡下の生検では2例が類基底細胞癌と診断されたのみであった.全例で食道切除再建(胸腔鏡下:6例開胸下:4例)を行い術後合併症として3例に縫合不全1例に反回神経麻痺.『1例に肺炎が発症した.壁深達度はpTlb:5例pT3:5例でリンパ節転移は4例に認めた.リンパ管侵襲静脈侵襲陽性例はともに5例(50%)と高率で病理組織学的な進行度は1:3例II:5例m:2例であった.再発例1は7例(pTlb:3例pT3:4例)でリンパ節:4例左肺=ユ例肝:1例残存食道再発:1例であった肺転移の1例は転移巣切除後生:西中で残存頸部再発の1例は放射線治療中である.全例の1年生存率は78.5%で2年生存率は35%であった.リンパ管侵襲・リンパ節転移の有無で生存率に差が無く静脈侵襲の有無で差を認めた.(結語)食道類基底細胞癌はリンパ管や静脈侵襲が高率でpTlb例でも高率に再発がみられる.今後有効な補助療法の開発が必要である. |