セッション情報 パネルディスカッション26(消化器内視鏡学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

75歳以上の後期高齢者に対する胆石症の治療戦略

タイトル 内PD26-2:

75歳以上の胆管結石に対する内視鏡治療の安全性・有効性

演者 伊藤 由紀子(日赤医療センター・消化器内科)
共同演者 辻野 武(日赤医療センター・消化器内科), 伊佐山 浩通(東京大・消化器内科)
抄録 【目的】高齢者の治療では安全性と低侵襲性が求められる。75歳以上の後期高齢者に対する内視鏡治療(乳頭バルーン拡張術:EPBD)による切石の安全性・有効性について検討した。
【方法】対象は1994年5月から2011年12月までにEPBDにて治療した総胆管結石626例(高齢群:75歳以上275例、若年群:75歳未満351例)。切石率・偶発症について若年群と比較検討した。AOSCやSeptic shockなどの場合は、緊急でドレナージを置き、後日採石を行った。
【成績】(1)高齢群の平均年齢は82.6±5.5歳、男/女 150/125。高齢群と若年群の背景で有意差を認めたものは男女比(p<0.0001)、ASA score(2.3、1.7 p<0.0001)、併存疾患保有率(80、50% p<0.0001)、平均結石径(8.8、6.5mm p<0.0001)、結石数(3.4、2.4 p=0.0026)であった。(2)併存疾患では特に心疾患の合併が多く(25%、8% p<0.0001)、抗凝固剤、抗血小板薬内服症例(19%、6% p<0.0001)も有意に多かった。(3)完全切石率には有意差はなかったが、治療回数、結石破砕率、治療時間は長い傾向にあった。(4)早期偶発症は、若年群と有意差は認めなかったが、全体で19例(6.9%)、28例(8.0%) P=0.5920、急性膵炎は9例(3.3%)、21例(6.0%) P=0.1134で高齢者に少ない傾向であった。しかし高齢群では、術中の血圧低下や誤嚥性肺炎といった若年群で見られない偶発症も認めた。
【結論】1)低侵襲で安全な内視鏡治療は、高齢者にとっても有効である。特に抗血小板剤・抗凝固剤投与中の例も多く、ESTに比べ出血の危険が少ないEPBDは良い適応といえる。2)高齢者は認知症や全身状態不良例、坦癌例もあり、個々の状況を勘案して切石に拘らずステント留置のみで対処することも必要である。3)血圧低下や誤嚥性肺炎を防ぐために、手技時間の短縮や鎮静剤の減量投与などの工夫が大切である。
索引用語 高齢者, 胆管結石