セッション情報 パネルディスカッション26(消化器内視鏡学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

75歳以上の後期高齢者に対する胆石症の治療戦略

タイトル 内PD26-5追:

75歳以上の後期高齢者に対する胆石症の治療戦略:総胆管結石症に対するERCPの有用性

演者 小泉 優子(虎の門病院・消化器内科)
共同演者 今村 綱男(虎の門病院・消化器内科), 竹内 和男(虎の門病院・消化器内科)
抄録 【目的】当院における後期高齢者の総胆管結石症に対するERCPの実態について調査し有用性を明らかにする。また、後期高齢者に特有の問題点や対策方法について検討する。【対象・方法】対象は、2006年3月から2011年2月までの5年間に総胆管結石症に対してERCPを行った726例である。この726例を、75歳以上の高齢者(A群:220例)と、75歳未満の非高齢者(B群:506例)の2群に分けて検討した。なお、ERCP後膵炎はCottonらの基準に基づき分類した。【結果】A群は、重篤でかつ複数の基礎疾患を有し、さらに抗血栓薬服用の頻度が高い傾向にあった。基礎疾患はA群で171例に認められ、内訳は循環器疾患103例、糖尿病36例、認知症を含む脳血管疾患28例、慢性肝障害25例、維持透析患者13例などであった。71例で抗血栓薬を服用しており、胆管炎治療のための緊急EBD例を除き、専門医へ相談のうえ高リスクの場合にはヘパリン化を併用し抗血栓薬中止後に切石術を施行した。抗血栓療法中止による脳・心血管合併症やヘパリン化による出血性合併症は認めなかった。A群では、総胆管結石径・総胆管径・傍乳頭憩室の合併率がB群に比し高率であった。処置時間が長時間に及ぶのを避ける目的と術中の体動や呼吸抑制が認められ安全確保のために、複数回に分けて処置を行った症例が33例認められた。 ERCP後膵炎は、A群で6例(2.7%、軽症のみ)、B群で22例(4.3%、軽症18例、中等症3例、重症1例)に認め、A群で発症率と重症度が低かった。 ERCP後のADL回復の指標として、手技施行後の退院・外出或いは外科転科までの日数を比較したところ、A群 8日(中央値)、B群 7日と両者で同程度であった。【結語】75歳以上の高齢者においても周術期の適切な管理によりERCP関連手技は比較的安全に施行可能と考えられた。したがって保存的治療に固執するよりも適切な時期に積極的にERCPを行うことが患者の救命のみならずQOLの改善に寄与するものと考える。
索引用語 総胆管結石, 高齢者