セッション情報 パネルディスカッション26(消化器内視鏡学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

75歳以上の後期高齢者に対する胆石症の治療戦略

タイトル 外PD26-15:

後期高齢者に対する積極的腹腔鏡下胆嚢摘出術(LAP-C)、特に早期・緊急LAP-Cの安全性に関する検討

演者 水口 義昭(日本医大・外科)
共同演者 有馬 保生(日本医大・外科), 内田 英二(日本医大・外科)
抄録 【目的】教室では1991年4月からLAP-Cを開始し2011年12月現在まで2044例の症例を経験した。胆石症、胆嚢炎に対して、1)右上腹部にMajor Surgeryの既往のある症例、2)重篤な併存疾患にて手術不可能な症例以外に対しては原則として年齢を問わずLAP-Cを施行している。しかし、後期高齢者は周術期合併症の発症率が高いとされている。そこで今回後期高齢者に対する早期・緊急LAP-Cの安全性に関する検討を行なった。【方法】2002年1月から2011年12月までの10年間に施行した胆石症、胆嚢炎手術症例1072例(総胆管結石症に対する手術を除く)の内、75歳以上の後期高齢者に対して施行した163例(75‐98歳)を対象とした。特に、緊急もしくは早期手術を施行した19例についての手術成績を含めLAP-Cの安全性について検討した。【成績】全163例の手術術式は開腹術32例、LAP-C132例であった。また、LAP-C症例の内9例(6.8%)が開腹移行されていた。手術手技以外の重大な周術期合併症は脳梗塞1例のみであった。緊急手術症例19例での術式は、開腹術10例、LAP-C9例であった。また、LAP-Cでは平均手術時間188分、出血量36.7mlと比較的良好な成績であった。さらに、LAP-Cにて1例術中総胆管損傷にて開腹移行となったが、周術期の重大な術後合併症なく経過良好にて退院していた。【考察・結論】後期高齢者は併存疾患が多く、手術施行には外科のみならず内科、麻酔科との十分な連携が必須と考えられた。我々が経験した脳梗塞発症症例に対しても、抗血小板、抗凝固剤の早期投与により発症を予防できた可能性もあり、後期高齢者に対してのLAP-Cは、術前耐術能の評価、周術期管理を適切に行うことにより、若年者に対するLAP-C同様、安全な手術施行が可能と考えられ、有症状胆石治療の第一選択と考えられた。特に緊急・早期手術症例においても症例の選択により後期高齢者であっても良好な術後経過が得られ、治療の第一選択になり得ると考えられた。
索引用語 腹腔鏡下胆嚢摘出術, 高齢者