セッション情報 シンポジウム3(消化器病学会・肝臓学会合同)

ミニマル肝性脳症の診断・病態・治療

タイトル 肝S3-1:

Neuropsycological Testによる潜在性肝性脳症の診断基準の検討

演者 平岡 淳(愛媛県立中央病院・消化器内科)
共同演者 徳本 良雄(愛媛大大学院・先端病態制御内科学), 道堯 浩二郎(愛媛県立中央病院・消化器内科)
抄録 【目的】潜在性肝性脳症(MHE)の診断基準はいまだ確立されていない。コンピューターを用いたNeuropsycological Test(NPテスト)による適切な診断基準を検討した。また本法は時間を要するため、検査項目数を減らした簡易法の適切な項目とその適否を検討した。【方法】NPテスト8項目のうち何項目が異常の際にMHEと診断してよいかの理論値を計算した。項目数を減らした時の理論値も同様に計算した。また、健常人(NC)28人、慢性肝疾患147人(肝硬変103人、慢性肝炎44人)、計175例を対象にNPテストを行った。このデータより検査項目間の独立性を検討した。さらに8項目での判定結果を標準とし、項目数を減らした際の正診率の高い組み合わせを検討した。【成績】健常人の90%が含まれる値をcut-offとし、健常人においてn個の検査項目中r個がcut-offから外れる確率はp=0.1r×0.9(n-r)× n! / r!(n-r)!で計算される。NPテスト(n=8)でpが0.05未満になる最少項目数rは3個と算出された。簡易法として項目数を7、6、5,4,3,2に減らした場合は、p<0.05になる最少異常項目数は順に3,3,3,2,2,2と計算された。対象例のデータで検査項目間の独立性を検討すると、複数の項目間に関連がみられた。検査項目の独立性を加味して項目数を減らした簡易法の組み合わせを検討すると、ナンバーコネクションテストA・フィギアポジションテスト・リアクションテストAの3項目の組み合わせ(診断基準:異常項目数2以上)で正診率86.0%、感度58.3%で、それ以外の組み合わせでは、正診率、感度が低い、または互いに独立していない項目が含まれる組合せとなった。【結論】NPテストによるMHEの診断基準として、8検査項目中異常が3項目以上、が適切と考えられた。簡易法なら上記3項目の組み合わせで異常項目数2以上が適切と思われたが、感度が58.3%にとどまり、採用の可否には議論を要すると考えられた。
索引用語 潜在性脳症, 肝性脳症