抄録 |
【背景】近年の非B非C肝細胞癌の増加の背景には、生活習慣病の影響が強く疑われているが、例えば、糖尿病や脂肪肝といったくくりでは、人口の10-30%程度までしか絞り込むことができない。【方法】非B非C肝癌絞り込みの方策を検討するため、1)当科で経過観察された非B非C肝炎患者283人(平均54.1歳、男/女=191/ 92)における肝発癌危険因子を見るための後ろ向きコホート研究、2)当科で初回治療を受けた肝細胞癌症例293人(平均68.8歳、男/女=221/72)を対象とした横断研究を行った。【結果】1)5.7年の平均観察期間中に39人に発癌を認めた。3、5、7、10年累積発癌率は7.0%、13.4%、16.2%、19.1%であった。 多変量Cox回帰の結果、年齢(ハザード比[HR]:1.10/年, P<0.001)、BMI25以上の肥満(HR:2.60,P=0.009)、糖尿病(HR:3.04,P=0.003)、アルコール摂取量 50g/日以上(HR:2.40,P=0.02)が発癌の危険因子であり、脂肪肝の存在は、はむしろ発癌リスクを下げるという結果であった (HR:0.307,P=0.02)。2)次にこれらの因子を293人の初発癌例に当てはめてみると、70歳以上、肥満、糖尿病、アルコール一日50g以上の割合は、各々48.1%、43.7%、49.6%、50%であり、いずれも過半数に達しなかったが、これらの因子でポイント化したところ、2因子以上の割合は、68.2%であった。上記因子以外では、GOT30IU/LかつGOT/GPT比1以上、血小板15万以下が、各々56.0%、65.9%、また、内臓脂肪面積100cm2以上、ファイブロスキャンによる肝弾性度15kPa以上の割合は各々、51.7%、66.2%であった。【結論】非B非C型肝癌の高リスク群の囲い込みのためには、肥満・糖尿病等の単一因子ではなく、これらを組み合わせたリスク評価システムが必要である。肝線維化が進んでおり、脂肪肝が消失している場合は、高危険群と認識すべきである。 |