セッション情報 ワークショップ1(肝臓学会・消化器病学会・消化器がん検診学会合同)

非B非C型肝癌を見落とさないための方策

タイトル 肝W1-4追:

非侵襲的肝線維化測定による非B非C肝細胞癌発生予測の有用性

演者 石橋 由佳(慶應義塾大病院・消化器内科)
共同演者 海老沼 浩利(慶應義塾大病院・消化器内科), 日比 紀文(慶應義塾大病院・消化器内科)
抄録 【背景と目的】近年ウイルス性肝炎の治療法の進歩によりウイルス由来の肝細胞癌(HCC)が減少し、非B非C(nBnC) HCCが増加している。この中には特発性も存在するが、アルコール性肝障害(AL)や非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)が背景になっていることが多い。これらのnBnC HCCも肝線維化の進行したに多く認められることから、肝線維化測定は発癌のスクリーニングに有用である。我々はFibroscan(FS)、Virtual Touch Tissue Quantification (VTTQ)の非侵襲的肝線維化測定を慢性肝疾患患者に行ってきたが、今回nBnC HCCの発癌をこれらの測定値から検討、ウイルス性肝炎患者と比較した。【方法】2003年から現在までに当院で施行した慢性肝疾患患者1271例(C型肝炎651 例、B型肝炎129 例、アルコール性103 例, NAFLD 74例, 等)のデータから、肝発癌有無をROC解析にて比較検討した。【結果及び考察】HCC発癌はどの疾患でも肝硬度の増加に伴い増加した。疾患別に検討すると、C型肝炎では14.6(FS), 1.81(VTTQ)、B型肝炎では13.8(FS), 1.07(VTTQ)、ALでは30.0(FS), 2.50(VTTQ)、NAFLDでは10.8kPa(FS), 1.68m/sec(VTTQ)以上で発癌リスクが認められた。すなわち、ALでは肝線維化が進行した症例で、一方NAFLDでは比較的肝線維化が乏しい症例で発癌していたが、このことは発癌年齢と逆相関していた(AL: 68.1±7.7歳、NAFLD: 77.6±9.0歳)。そのため、発癌予測式を多変量解析から得られたFS値と年齢から作成したところ(HCC=-8.53+0.047*[FS]+0.015*[Age])、NAFLDではAUC=0.981と極めて有用な判定式となった。【結論】FibroscanやVTTQによる非侵襲的肝線維化測定はnBnC HCCの囲い込みに有用であるが、年齢を考慮してそのリスクを調節する必要が認められた。
索引用語 非侵襲的肝線維化測定, 肝細胞癌