セッション情報 ワークショップ1(肝臓学会・消化器病学会・消化器がん検診学会合同)

非B非C型肝癌を見落とさないための方策

タイトル 肝W1-6追:

非B非C型(NBNC)肝細胞癌のサーベイランスにおける血中Insulin-like growth factor 1(IGF-1)測定の有用性

演者 中西 満(北海道大大学院・消化器内科学)
共同演者 中馬 誠(北海道大大学院・消化器内科学), 坂本 直哉(北海道大大学院・消化器内科学)
抄録 【目的】NBNC肝細胞癌はNASH併発例の他,原因不明例でも生活習慣病の関与が指摘されているが適切なサーベイランスが行われていないのが現状である.血中IGF-1はインスリン抵抗性,肝予備能を反映する事や肝細胞癌患者における血中IGF-1の低下も報告されている.今回,NBNC肝細胞癌のサーベイランスにおける血中IGF-1測定の有用性を検討した.【方法】対象は2000年1月から2012年2月までに当科で診療した初発肝細胞癌患者405例.HBs抗原陽性(HBV群)145例,HCV抗体陽性(HCV群)163例,NBNC群97例.NBNC群の内訳はアルコール群58例,自己免疫性群6例,NASH群9例,原因不明群24例.コントロール群としてHBV無症候性キャリア30例の血清を用いて検討した.血中IGF-1は年齢,性別で換算した標準偏差スコア(SDS)で表した.以下の項目を検討した.(1)肝細胞癌の成因別比較(2)NBNC群における発癌寄与因子の検討(vs.コントロール群,ロジスティクス回帰分析)(3)NBNC群の発癌サーベイランスにおける血中IGF-1値の選定.【成績】(1)NBNC群は他群に比べ糖尿病合併率,BMI25以上の割合,他臓器癌合併率が高値であった(46%,38%,14%;それぞれP<0.01)(2)発癌に寄与する因子として多変量解析でNBNC群全体ではAlb4.0g/dl未満とIGF-1<-1SDSである事が抽出され(P=0.02,P=0.04),原因不明群でも同様の結果であった(P=0.02,P=0.03).NASH群ではIGF-1<-1SDSである事のみが抽出された(P=0.03)(3)NBNC群におけるIGF-1<-1SDSの割合はChild-Pugh grade A/B+C;35.5%,93.3% (P<0.01)でありIGF-1値は肝予備能を反映していた.またNBNC群の発癌サーベイランスにおける血中IGF-1値のカットオフ値はROC解析で-1SDS(感度75%,特異度80%)であった.【考案/結語】インスリン抵抗性,肝予備能を反映する血中IGF-1値の測定はNBNC肝細胞癌,特にNASHや生活習慣病患者において肝細胞癌発症のサーベイランスに有用である可能性が示唆され肝細胞癌診療の一助となる可能性が考えられた.
索引用語 肝細胞癌, IGF-1